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TFGニュース 2024年10月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2024年10月号 No.398

Ⅰインボイス開始から1年

―よくある質問Q&A―
インボイスが開始されてから1年が経過しました。初めての制度で、不安や不明点もあったかと思います。そこで、この1年で質問の多い項目について改めて記載したいと考えます。

■適格請求書の交付について

Q:1年を超える期間にわたって毎月役務の提供(例:保守契約など)を行っている場合において、課税期間をまたぐような長期間にわたる課税資産の譲渡について、対価の前受け時にまとめて適格請求書を交付してもよいですか。
A:原則は取引の期間が売り手の課税期間をまたぐ場合は、その都度発行が必要です。 他方、課税期間をまたぐ期間に係る取引をまとめて適格請求書に記載することも妨げられるものではなく、また、課税資産の譲渡等を行う前に適格請求書を交付することも可能です。 そうした点と請求書交付実務の簡便性という観点から、例えば、毎月の保守契約のように一定期間継続して同一の課税資産の譲渡等を行うものについては、売手である事業者が適格請求書の交付対象となる期間、継続して適格請求書発行事業者である限りにおいて、課税期間の範囲を超える期間をまとめて適格請求書を交付することとして差し支えありません。

■小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置〈2割特例〉について

Q:2割特例の適用は該当しますか。
A:令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者(免税事業者が「課税選択届出書」の提出により課税事業者となった場合を含みます)が適格請求書発行事業者となる場合(注)には、納付税額の計算において控除する金額を、その課税期間における課税標準である金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額に8割を乗じた額とすることができる経過措置(以下「2割特例」といいます。)が設けられています。
  (注) 課税事業者が適格請求書発行事業者となった場合であっても、当該適格請求書発行事業者となった課税期間の翌課税期間以後の課税期間について、基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合には、原則として、2割特例の適用を受けることができます。 
また、2割特例は、簡易課税制度のように事前の届出や継続して適用しなければならないという制限はなく、申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記することにより、適用を受けることができます。 
なお、2割特例の適用を受けることができない課税期間については、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間については適用できませんので留意が必要です。 
2割特例の計算過程についての算式は以下のとおりです。 
納付税額 = 売上税額 - 特別控除税額(売上税額の8割)

■古物営業法上の許可事業者

Q:当社は中古車販売業(古物商)を営んでおり、事業者や消費者から中古車の仕入れを行っています。適格請求書等保存方式の下では、消費者からの仕入れは、仕入れ税額控除ができないのでしょうか。
A:古物営業法上の許可を受けて古物商を行う場  合、適格請求書発行事業者以外の者から古物営業法に規定する古物(この場合中古車)を買い受けた場合は、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入れ税額控除が認められます。(古物商等特例)
  尚、相手方が適格請求書発行事業者である場合は、適格請求書の発行を受け、それを保存する必要があります。
このような特例は、質屋・中古住宅販売・再生資源卸売業などにも適用されています。

■旅費出張費の予約

Q:出張での仕事が増え最近は予約サイトに頼っています。その場合、仕入税額控除を受けるためにはどうすればいいですか。
A:この場合は3種類の方法に分かれます。
 (1)予約サイトのみで運営されている場合
直接ホテルへの支払いがないため、領収書・請求書 は出ないことが多いです。その場合、宿泊明細書(適格簡易請求書)を受領し保存してください。
 (2)パックツアーなど旅行サービスとして提供する場合
JTBなどは出張パッケージで販売しています。宿泊を仕入して販売しているのでこの場合は旅行会社の適格請求書の受領保存が必要です。
 (3)出張旅費等特例
社員の出張等に伴う宿泊費で、社員に支給するもののうち、その旅行に通常必要と認められる部分の金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入れ税額控除が認められます。

Ⅱ個人投資家の株式の譲渡損益と税金の関係

―確定申告の要否や損益通算・繰越控除についてー
 個人投資家の場合、損益通算や繰越控除、譲渡損と配当金との損益通算のなど、株式投資と税金の関係を正しく理解して株式投資を行わなければ、税金を余計に払う可能性があります。個人投資家の株式の譲渡損益にかかる税金の計算方法や確定申告、損益通算や繰越控除についご説明します。

■株式の譲渡損益とは

 株式の譲渡損益とは、株式を売却(譲渡)したことによる利益や損失をいいます。個人投資家の株式の譲渡益には所得税及び復興所得税や住民税といった税金がかかります。

■株式の譲渡損益にかかる税金の計算方法

 株式の譲渡益が生じた場合、ほかの所得とは合算せず分離して税金を計算する分離課税の対象です。株式の譲渡益が生じた場合の税金は、譲渡価額から取得費や委託手数料等の費用を引いて税率をかけて計算します。税率は所得税及び復興所得税が15.315%、住民税が5%です。
【例】
株式の譲渡益が100万円、取得費や委託手数料等が20万円の場合
・譲渡益 = 100万円 - 20万円 = 80万円
・所得税及び復興所得税 = 80万円 × 15.315% = 12万2,520円
・住民税 = 80万円 × 5% = 4万円
1年間の株式の譲渡益と譲渡損を合算して譲渡損益を計算し、譲渡益が出ている場合は税金がかかります。ただし上場株式等と一般株式等は原則として合算はできず、別々に税金を計算します。

■確定申告の義務の判断

 譲渡損益がマイナスの場合には確定申告の義務は生じませんが、プラスの場合は確定申告の義務が生じる場合があります。確定申告の義務が生じるかどうか、判断の基準になるのは株式投資の「口座の種類」です。
株式投資の口座の種類は以下の3つです。
(1) 一般口座
(2) 特定口座(源泉徴収なし)
(3) 特定口座(源泉徴収あり)
一般口座と特定口座(源泉徴収なし)は、確定申告の手続きが必要です。一方で特定口座(源泉徴収あり)は、株取引で得た利益から税金が源泉徴収されて証券会社が納税を行うため、確定申告を行う義務はありません。

■損益通算と繰越控除

 譲渡損益がマイナスの場合、確定申告をする義務はありませんが、以下の損益通算と繰越控除の適用を受けるためには確定申告をする必要があります。
1.損益通算
 損益通算とは、ある年に株式の譲渡益と譲渡損が生じた場合に、両者を相殺して譲渡損益を計算することです。
同じ特定口座(源泉徴収あり)で生じた譲渡益と譲渡損は相殺されて自動的に税額が計算されますが、異なる証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で生じた譲渡益と譲渡損は相殺されないため、確定申告を行わなければ、損益通算できません。
 また、上場株式等に係る配当所得があり、配当金の課税方法について申告分離課税を選択している場合は、上場株式等の譲渡損と配当所得の損益通算が可能です。配当金の課税方法は以下の3種類です。
(1)申告不要
(2)総合課税
(3)申告分離課税
 このうち配当所得で申告分離課税を選択している場合は、上場株式等の譲渡損と配当所得とを損益通算することができます。
2.繰越控除
 繰越控除とは、損益通算をしても損失額が残る場合に、その損失を最大3年間繰り越せる制度です。翌年以降に譲渡益が出た場合、繰り越した譲渡損を控除できますが、繰越控除の適用を受けるためには、確定申告が必要です。
 例えば確定申告をして80万円の株式の譲渡損を繰り越し、翌年に100万円の株式の譲渡益が出た場合、繰越控除の適用を受ければ100万円から80万円を引いた20万円に対して税金を計算できます。
 一方、繰越控除の適用を受けないと、譲渡益100万円に対して所得税、住民税が課されます。
また、上場株式等に係る配当所得があり、配当金の課税方法について申告分離課税を選択している場合は、上場株式等の譲渡益だけでなく配当所得からも、前年以前から繰り越した上場株式等の譲渡損を控除できます。 

Ⅲ 伸びているのに黒字倒産

-黒字倒産のからくり-
世の中には、「あの企業が倒産!?」ということはままあります。業績好調で黒字のはずなのに倒産したスタートアップ企業や中小企業は、たくさんあります。では、なぜそのようなことが起こるのでしょう。黒字倒産の実態を見てみましょう。

■売掛金の管理不足

1.サイト
 現金商売なら問題ありませんが、企業活動は多くが締めと支払日を設けます。その際、サイトが短いのであれば問題ありませんが、〆後の翌々10日払いなど企業によってまちまちです。支払いが手形の場合もあります。現金化の前に支払いが発生すれば、おのずと資金繰りは圧迫されます。
2.決済・与信管理
 代金回収は資金繰りの要です。取引が成立しても回収までが必要です。代金回収が遅れれば遅れるほど資金繰りは圧迫していきます。常に最新の情報収集は必要でしょう。

■在庫の過剰

1.在庫の上滑り現象
 在庫はすべて売れれば問題ありませんが、そんなうまく仕入れはできないのも現実です。売れ残った在庫は、なかなか売れないものです。そういった在庫が「塵も積もれば山となる」的に残って積みあがっている状態は、資金が寝てしまっている状態です。新しい商品ばかり売れて、古い在庫が残る現象をいいます。高級消費財を扱う企業は特にこれに気を付けなければなりません。
2.長期滞留在庫
 長年売れずに残っている商品はないでしょうか。一昔前ならその商材を混ぜて「福袋」として販売した時期もありましたが、今は「福袋」の商材も企画品として扱い「福袋」用の商品を用意しています。長期滞留在庫が多くなればなるほど流動資金の枯渇を招いていきます。

■無理な投資

1.自社ビル
 自社ビルを建てることは一種のステータスとなり、その行為そのものは賛否を問うつもりはありません。ただ、自社ビルへの投資は、家賃の支払い分の返済でできるのか年間の固定資産税はどうなのか、資金計画が重要になってきます。完全に寝てしまうお金という認識が必要です。
 
2.設備投資
 企業が成長を目指して過度な設備投資や新規事業への投資を行うことは、一見前向きな戦略のように見えて、黒字倒産の一因になりかねません。特に、市場の需要を正確に予想できずに行われた投資は、期待された収益を生まず、逆に資金繰りを圧迫する結果になることもあります。無理な投資は、利益を上げている企業であっても資金流出が収入を上回り、最終的には、倒産に至るリスクを高めます。

■負債の増加

1.銀行借り入れ
 会社を発展させるには、どこかで資金流入して投資するときがあります。規模と返済計画を考慮せず、借りることはリスクを増大します。現在も倒産予備軍としてコロナ融資の返済が厳しい企業があります。新たに借入も出来ず、商品や投資にお金が回せなくなることが先細りを予感させます。
2.リース
 リースも負債の一部となります。契約内容を精査したうえで契約しないと、壊れても払い続けなければならない契約もあることを知っておきましょう。(大抵は保険などで対応できますが)

■収入と支出のミスマッチ

1.売り上げ確定と入金のずれ
 大きなプロジェクトの場合、売上が確定していても入金まで期間を要する場合があります。その場合でも仕入れなどや給料の支払いは待ってもらえません。
2.支払のタイミング
 取引先の入金のサイクルがまちまちなのはどこの企業でもよくあることです。しかし、支払いのタイミングは最初に決めてあるはずです。新しい取引先のサイクルが長くなり、ボリュームが増えてしまうといきなり、資金難に陥ります。

■市場環境の変化

1.価格設定
 売れないからといって過剰に低い価格を設定した場合、一時的な売り上げ増にはなるかもしれません。ところが取引先は新しい商材でもまた、安くするのではないかと、購入を控えようになり、長期的には利益率低下と売り上げ減に悩むことになるでしょう。
2.市場の需要
 時代遅れの商品、タイミングを失った商品に投資するなどの誤った判断は、資金の無駄遣いにつながり結果的に資金不足に苦しむでしょう。
 企業の持続可能な成長と安定は、正確な市場分析と適切な価格戦略がポイントとなります。
 
 黒字倒産と聞いて驚かれる人もおられるかと思いますが、実際2021年の東京商工リサーチの発表では倒産した企業の約4割が黒字でした。損益計算書ではなかなかわからないのが実情です。毎月の正確な試算表からキャッシュフローを計算して問題点をあぶりだすことができます。また、その試算表をもとに経営計画や資金繰り表を作ることによって資金需要や投資時期などを可視化することができます。そして投資計画などを織り込んで事業発展・拡大を期すのが経営者としての役割でしょう。
従って、毎月の会計監査は本当に大事なものなのです。TFGでは、コンサルティング業務も請け負っております。最初のご相談は事務所において無料で行っておりますので担当者までご連絡ください。

今月のブックマーク

「リサーチリサーチ」リサーチしているものをリサーチできるサイトです。

(再)事業承継・引継ぎ補助金のご案内

 事業承継引き補助金は、令和7年度も継続。中小企業者及び個人事業主が事業承継、事業再編及び事業統合を契機として新たな取組を行う事業等について、その経費の一部を補助することにより、事業承継、事業再編及び事業統合を促進し、わが国経済の活性化を図ることを目的とする補助金です。(尚、令和6年度の内容です。令和7年度は変更もあり得ます。)
 
■補助対象事業者の要件
1.経営革新枠  経営資源引継ぎ型創業や事業承継(親族内承継実施予定者含む)、M&A   
を過去数年以内に行った者、又は、補助期間中に行う予定の者
2.専門家活用枠 補助事業期間に経営資源を譲り渡す、又は譲り受ける者
3.廃業・チャレンジ枠  事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う者
 
■補助率及び補助上限額

補助対象

補助上限

補助率

対象経費

経営革新枠

600~800万

1/2

※2/3

設備費・原材料費・委託費・広告費等

専門家活用枠

600

買い手支援 2/3

売り手支援1/2 or※2/3

外注費・委託費・システム利用料等

廃業・チャレンジ枠

150

1/2

※2/3

リースの解約費。解体費・廃業支援費 

  ※要件によって増額します。
 

一部報酬表の見直しについて

デフレ時に報酬表を下方へ引き下げ現在まで据え置いておりましたが、昨年10月改正のインボイス導入、電子帳簿保存法の改正に伴い月次、年次での監査工数の増加、また今般の社会の環境の変化に鑑み、令和6年9月1日より一部(別表1及び消費税申告書分)報酬表の見直しをさせていただきます。現在契約中の月次報酬については更新時期に順次お声がけをさせていただくことにもなろうかと思います。何卒ご理解賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、中小M&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ!
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編集委員長 藤本 清
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