中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
2024年4月号 No.392
Ⅰ 交際費から除かれる飲食費の金額改定!!
― 1人当たり1万円以下に引き上げ・適用タイミングについて ー
令和6年度税制改正では交際費等の損金不算入制度について交際費等の範囲から除外される飲食費の金額基準が1人当たり1万円以下(現行:5,000円以下)に引き上げられる予定となっております。
まず、交際費の定義などを再確認したいと思います。
まず、交際費の定義などを再確認したいと思います。
交際費・交際費等の範囲から除かれるもの
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。
次に掲げる費用は交際費等から除かれます。
- 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
- 飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)であってその支出する金額を飲食等に参加した者で割って計算した金額が5,000円以下である費用
飲食費の金額基準の変更
令和5年12月に閣議決定された令和6年度税制改正大綱では交際費等の損金不算入制度について、交際費等の範囲から除外される飲食費の金額基準の引上げと接待飲食費の50%損金算入特例と中小企業の定額控除限度額(年800万円)の特例の適用期限を令和9年3月31日まで3年延長することが記載されています。
飲食費の金額基準の引上げについては租税特別措置法施行令37条の5の改正により1人当たり5,000円から1万円に改定される予定となっております。金額の引上げについては、令和6年度与党税制改正大綱における基本的考え方によりますと、飲食料費に係るデフレマインドを払拭する観点から実施されるとの記載となっております。
なお、飲食費の定義や一定の事項を記載した書類の保存が適用要件となっていますが、その要件は現行のままであります。
飲食費の金額基準の引上げについては租税特別措置法施行令37条の5の改正により1人当たり5,000円から1万円に改定される予定となっております。金額の引上げについては、令和6年度与党税制改正大綱における基本的考え方によりますと、飲食料費に係るデフレマインドを払拭する観点から実施されるとの記載となっております。
なお、飲食費の定義や一定の事項を記載した書類の保存が適用要件となっていますが、その要件は現行のままであります。
金額基準の適用関係
早期に金額基準の変更による効果を得ることができるよう、法人の事業年度を基礎とした適用関係ではなく令和6年4月1日以後に支出する飲食費に適用されます。具体的には飲食費の「支出」ベースで改正後の「1万円基準」が適用されることとなります。「事業年度」ベースで適用された飲食費の5,000円基準や接待飲食費の50%損金算入特例とは異なる適用関係になるため留意が必要であります。
つまり、3月決算法人以外の法人であっても、令和6年4月1日以後に支出する飲食費があれば、改正後における飲食費の1万円基準を適用することになることに留意が必要となります。
つまり、3月決算法人以外の法人であっても、令和6年4月1日以後に支出する飲食費があれば、改正後における飲食費の1万円基準を適用することになることに留意が必要となります。
厚生労働省 情報ミニコーナー
厚生労働省 情報ミニコーナー
60歳以降に在職(厚生年金保険に加入)しながら受け取る老齢厚生年金を在職老齢年金と言い、賃金と年金額に応じて年金額の一部または全部が支給停止される場合があります。賃金と年金額の合計額が50万円を超える場合、50万円を超えた金額の半分が年金額より支給停止になります。
Ⅱ Peppol(ペポル)を御存じでしょうか
― グローバルな電子インボイス -
令和5年10月よりインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートし、令和4年1月より施行した電子帳簿保存法は2年間の宥恕措置期間が終わり、令和6年1月より実質的にスタートしました。ところで、ヨーロッパでは「Peppol(ペポル)」に基づくデジタルインボイスの国際的な利用が進んでいます。ここでは、電子帳簿保存法について少し整理した上で、「Peppol(ペポル)」に基づくデジタルインボイスについてふれさせて頂きます。
電子帳簿保存法により義務化された保存書類
注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などについて紙ではなく電子データで相手に送信又は、受信した場合、その電子データを保存しなければなりません。
その保存について、改ざんの防止措置をとる必要があり、又、「日付・金額・取引先」で検索できる必要もあり、ディスプレイやプリンタ等を備え付ける必要があります。
※この電子データを保存するファイル形式に制約はなく、PDFに変換してもよく、スクリーンショットでもかまいません。
その保存について、改ざんの防止措置をとる必要があり、又、「日付・金額・取引先」で検索できる必要もあり、ディスプレイやプリンタ等を備え付ける必要があります。
※この電子データを保存するファイル形式に制約はなく、PDFに変換してもよく、スクリーンショットでもかまいません。
電子インボイスとは
電子インボイスとは、インボイス制度で仕入税額控除の要件を満たす適格請求書の電子データのことをいいます。
紙のインボイスと違い、電子インボイスは適格請求書の取り扱いを一律化したり、紙やインク等のコスト削減につながります。この電子インボイスには以下の4つのデータがあり、受送信した電子インボイスは電子帳簿保存法により保存が義務化されます。
1. 光ディスクや磁気テープ等によるもの
2. EDI取引によるもの
3. 電子メールによるもの
4. インターネット上のサイトを通じたもの
紙のインボイスと違い、電子インボイスは適格請求書の取り扱いを一律化したり、紙やインク等のコスト削減につながります。この電子インボイスには以下の4つのデータがあり、受送信した電子インボイスは電子帳簿保存法により保存が義務化されます。
1. 光ディスクや磁気テープ等によるもの
2. EDI取引によるもの
3. 電子メールによるもの
4. インターネット上のサイトを通じたもの
デジタルインボイスの必要性
- 昨今の消費税率における複数税率化や、支払先の請求書が適格請求書の要件を満たしているかの確認などで、多大なコストが発生しています。対策として、電子データを直接会計システムに読み込み自動仕訳ができればコスト増をある程度抑えることができますが、メールやweb上でPDF等の電子データを受信しても、必ずしも会計システムに自動読み込みできるとは限りませんし、web-EDIなどを利用する場合に、取引先のシステムが同じ規格を使用していなければ自動読み込みは困難なものとなります。電子インボイスに、国内で規格統一された仕様を設けることで、これらの問題が解消されます。この規格統一された電子インボイスのことをデジタルインボイスといいます。
- 請求書の電子化で改ざんの可能性が危惧され、データ送信時に改ざん防止措置をとる必要があります。デジタルインボイスでは適格請求書発行事業者情報を付与した電子署名の導入が検討されています。
- 紙のインボイスからデジタルインボイスに移行することで、保管する作業時間の削減や、保管場所の削減につながります。また、請求書の検索を迅速に行えます。法人税や所得税法上の書類の保管義務だけでなく、取引履歴の確認を迅速かつ正確に行えます。
- 国際基準に準拠したデジタルインボイスであれば、海外での取引も同じように扱える。
世界標準規格の「Peppol(ペポル)」
電子化された文章の「文章仕様」「運用ルール」「ネットワーク」の世界標準規格に「Peppol(ペポル)」があります。ヨーロッパを中心にオーストラリアやシンガポール等30ケ国以上で採用されています。
正式名称は「Pan European Public Procurement Online」です。
「Peppol」に接続することで、日本国内に限らず世界中の「Peppol」と接続している利用者と電子インボイスでのやり取りができます。
これにより、一元化されるので業務効率がアップし、ペーパレス化によるコスト削減や、海外との取引も円滑化します。
Ⅲ 残業規制スタート
― 生活はどう変わる -
働き方改革の一環として制定された36協定の時間外労働の罰則付き上限規制が猶予のあった事業でも適用されることとなりました。時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり※「臨時的な特別な事情」がなければこれを超えることができなくなりました。
※「臨時的な特別な事情」
通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならない。
※「臨時的な特別な事情」
通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならない。
2024年4月より適用となる内容
- 建設業
災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制が全て適用されます。例外で復旧・復興は時間外労働月100時間未満と休日労働2~6か月平均80時間以内とする規制は適用されません。 - 運送業
特別条項付36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となりますが、時間外労働月100時間未満と休日労働2~6か月平均80時間以内とする規制は適用されません。また、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月までとする規制は適用されません。 - 医業
(1) 診療に従事する勤務医には、時間外・休日労働時間の上限規制が適用されます。その際、年間の上限については、一般の労働者と同程度である960時間が上限となります。
(2)特別条項付き36協定を締結する場合の年間時間外・休日労働の上限が最大1860時間となる。(例外的に適用されない場合がある)
(3)時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6か月までとする規制は適用されない。
(4)時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月までとする規制は適用されない。
(5)医療法等に追加的健康確保措置に関する定めがある。
経営環境の変化
- 人件費
一昔前ならサービス残業なるものがまかり通っていましたが現在は、ほぼ存在がないと言っていいでしょう。単純に残業代が減るからコストは下がると考えるのは早計です。現状の人員のままなら機会損失(医業においてはふさわしくないですがこのまま引用させていただきます)を招くこととなり売り上げに響いてきます。その分人材の確保によって賄う必要があり間接経費も増え、最終的にはコストが上がってきます。 - 設備投資
ほとんどの企業が新たな策を検討・検証している時期です。建設業界では積算のAI・IoTや現場確認のDX化。運送業界では、業務改善・荷役作業のアシスト機器導入、配送ルートの時短通知など。医業では、診断のAI利用など人が担ってきたものをいかにロボットなどに移行していくのか試行錯誤している段階と言えます。従って、こちらに資金投入せざるを得ない状況となりコストが上がってきます。 - 消費者への理解
運送業界ではすでにスピードを競う配達競争に終止符が打たれ、消費者も理解を示しつつあると思われます。今まで当たり前のように近い場所なら翌日には届いていたものが翌日には届かなくなる。消費者からすれば、どうしてとなるかもしれませんが、これが世界のスタンダードなのです。逆に世界からは過剰包装とともに、ニュースになるほどでした。建設業界では適切な納期を設定する動きがあり、国土交通省が「建設工事における適正な工機設定等のためのガイドライン」を発表して適切な工機を設定し施行時期を平準化することを求めています。 - 罰則
6か月以下の懲役または30万円以下の罰金とされていますが推定ですが影響力の大きい大手企業から徐々に介入するのではないでしょうか。
労働者からの視点
- 賃金
基本給を低く抑え時間外労働で給与を多く支払う形態を採用している企業では給料が減る可能性があります。 - 労働環境
改善されないと若手の人材が定着することはないでしょう。高齢化が進む業界では、より危機感を持って、コミュニケ―ションを取りやすい環境などの取組が必要となってきます。
また、施設面などでは厚生労働省が労働衛生基準を設けており、照明の照度や休憩室など細かく基準が公表されています。
消費者の視点
- サービス面
運送業では、配達のリードタイムが増えることとなるでしょう。1日で届いたものが2~3日かかるなど遅くなることになるでしょう。さらに、宅配便などの再配達もコストを消費者に求めてきてもおかしくない状況です。従って「置き配」がさらに進むこととなるでしょう。また、観光バスなどは、今まで観光地を1日で4か所回っていたのが、3か所に減るなどするでしょう。
建設業では、納期の見直しがかかり、今まで1か月でできていたものが2か月になるなど、発注側の計画自体の前倒しが迫られることとなるでしょう。また途中での変更などがある場合は、納期の延長が起こることとなるでしょう。 - コスト面
すぐに大幅なコストアップには繋がらないでしょうが、材料などの価格上昇と同じように人件費のアップ分も徐々に上がってくるでしょう。医業などでは社会保険が支える人の比率が下がってきており一人当たりの社会保険料も上がらざるを得ないでしょう。
労働条件明示のルールの変更(補足)
令和6年4月から労働条件明示事項が追加され、明示のタイミングも注意が必要です。
対象 | 明示のタイミング | 追加される明示事項 |
全ての労働者 | 労働契約の締結時 有期労働契約の更新時 | 就業場所・業務の変更の範囲 |
有期契約労働者 | 有期雇用契約の 締結時と更新時 | 更新上限の有無と内容 (有期労働契約の通算契約期間又は更新回数の上限) |
無期転換ルールに基づく 無期転換申込権が 発生する契約の更新時 | 無期転換申込機会 無期転換後の労働条件 |
そもそも働き方改革の一環として、スタートした残業規制です。労働人口が2060年には、ピーク時の半分になるとの観測から1億総活躍社会実現の取組として政府主導で進んできました。労働力不足解消の対策として「働き手を増やす」「出生率を挙げて将来の働き手を増やす」「労働生産性を上げる」。この対策の内、今回は、建設業・運送業・医業はすぐには対応できないとのことで猶予期間を設けてきましたが、「労働生産性を上げる」はもう待ったなしとして、その期限の延長は認められませんでした。これからは、いかに効率を上げ、1人当たりの可処分所得を増やし、少子高齢化に終止符を打つのか。中小企業にとってはさらに大きな課題が科せられたと感じています。
今月のブックマーク
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中小企業省力化投資補助金のご案内
中小企業等の売り上げ拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足で悩む中小企業に対して、IoT、ロボット等の人出不足解消に効果がある汎用製品を導入するための事業費等の経費の一部を補助することにより、簡易で即効性のある省力化投資を促進し、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつながることを目的とします。
■補助対象事業者の要件
1. 人手不足の状態にあることが確認できること
2. 全ての従業員の賃金が最低賃金を超えていること
■補助率及び補助上限額
■補助対象事業者の要件
1. 人手不足の状態にあることが確認できること
2. 全ての従業員の賃金が最低賃金を超えていること
■補助率及び補助上限額
補助対象 | 補助上限額 | 補助率 | |
補助対象としてカタログに登録された製品等 | 従業員数5名以下 | 200万円 (300万円) | 1/2以下 |
従業員数6~20名 | 500万円 (750万円) | ||
従業員数21名以上 | 1000万円 (1500万円) |
※現在、カタログ掲載製品・企業を登録申請中です。公募時期は未定ではありますが近々発表があります。
TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、中小M&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ! TFGでは現在、時差出勤及びテレワークを限定的に実施しております。ご不便をおかけすることがあるかもしれませんがご理解賜わりますようよろしくお願い申し上げます。 |
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編集委員長 藤本 清
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