本文へ移動

TFGニュース 2025年2月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
メールマガジンタイトル
2025年2月号 No.402
経営のお役立ち情報

Ⅰ一時所得に対する課税について

― ふるさと納税返礼品も注意してください。―
 いよいよ令和6年分の確定申告が始まりました。昨年にふるさと納税をして「ふるさと納税ワンストップ特例」を利用されない方は、寄付金控除をうける為、確定申告の準備で大変かと存じます。西暦2008年にふるさと納税がスタートし、いまや、実際にふるさと納税をしていなくても、日本国民でふるさと納税をすれば、税金の控除が受けられ、返礼品をもらえることを知らない人はいないといってもいいくらいです。ところで、この返礼品は、所得税法上、一時所得に該当することを御存知でしょうか。一時所得について50万円の特別控除があるので、結果的に、ふるさと納税による返礼品は課税されない方が多いですが、もし、この返礼品以外に一時所得に該当するものがあればこの特別控除額を超え課税されることになるので気を付けてください。

■ 一時所得の定義と計算式

 一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。所得を算出する計算式は以下の通りです。
  一時所得 = 総収入金額 - その収入をえるために支出した金額 - 特別控除額(50万円)
  所得税を計算する上で、上記の一時所得の金額の1/2を他の所得に加えます。

■ ふるさと納税の返礼品の価格はいくら

 返礼品を頂く側にすれば、その返礼品はいくらするのかがわかりません。では、どうやってその金額を算出したらいいのでしょうか。
 その金額と、収益計上時期について令和4年2月7日に国税不服審判所で裁決がありました。その返礼品の価格は、各地方公共団体の返礼品調達価額(送料込み)が相当であり、収入とすべき時期はその返礼品が届いた年という内容です。
 この各地方公共団体の返礼品調達価額は、総務省が発表する「ふるさと納税に関する現況調査結果」によります。令和6年8月2日発表分によると、「返礼品の調達に係る費用」の割合は27.1%、「返礼品の送付に係る費用」の割合は7.2%で、合計で34.3%となります。つまり、寄付した金額にこの割合を掛けることになります。 
 収入とすべき時期はその返礼品が届いた年になるので、年末に寄付しても、返礼品が届くのが来年になったりするので、翌年の一時所得の計算で見落とさないようにしてください。

■ ポイントの種類に注意

 ペイペイやクレジット等で決済した場合やECサイトを利用した場合に、購入金額に応じてポイントが付いたりします。このポイントを商品の購入にあてた場合は、いわゆる値引きとして扱われ原則、非課税です。
 しかし、抽選キャンペーン等でポイントを取得した場合は、臨時・偶発的にポイントを取得したので、値引きではなく、ポイントを利用した時に、一時所得となります。

■ 一時所得の具体例

 ふるさと納税の返礼品以外に一時所得に該当する収入について、以下のものがあるので注意して下さい。
  1. 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます)
  2. 競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます)
  3. 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます)や損害保険の満期返戻金等
  4. 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます)
  5. 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
  6. 資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの
  7. 人格のない社団などの解散によりその構成員が受け取る清算分配金等
  8. 資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの
  9. 株主等としての地位に基づかないで発行法人から有利な発行価額で新株等を取得する権利を与えられた場合の所得(給与等又は退職手当等の支給に代えて与えられた場合を除きます)
  10. 借家人が家屋の立退きに際して受取る立退料(借家権の譲渡による部分及び収益補償の部分を除きます)
  11. 労働基準法第114条《付加金の支払》の規定により支払を受ける付加金
  12. 不動産売買契約の解除に伴う違約金(業務に関して受けるものを除きます)
  13. 地方税法の規定に基づいて受け取る住民税及び固定資産税の前納報奨金(業務用固定資産に係るものを除きます)

Ⅱ通勤交通費は給与なのか?

-なぜ給与明細に載っているのか?-
 年末調整も一段落。あとは確定申告の本番を待つばかりとなりました。
 ところで、年末調整の主役となった給与所得。その中には様々なものが含まれていますが、年末調整ではどうしても端に追いやられてしまうのが通勤交通費や通勤手当といった日々の通勤に要する費用ではないかと思います。年末調整が給与に関する年間の所得税を確定させる作業であることを考えれば、所得税がかからない通勤交通費にスポットが当たらないのは仕方ないのかもしれません。でも、ちょっと待ってください。だったら、なぜ給与明細に通勤交通費の記載があるのでしょうか? その答えをこれから探っていきたいと思います。

■給与所得とは

 所得税法によりますと、給与所得とは以下のように定義されています。
給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。(所得税法第28条1項)
少しわかりにくいので、「給与」というものを掘り下げて考えてみます。
「給与」という言葉を直接的に定義しているものにあたることはできませんでしたが、多くの文献で言われていることを解釈して定義すると、雇用主と労働者との間で締結される雇用契約に基づき、労働者が提供する労働役務に対し雇用主が支払う労働対価である、といえるのではないでしょうか。
「給与」というものが見えてきたところで、じゃあ通勤交通費はどういう扱いになるの? ということですが、雇用契約上勤務先が定められており、その勤務先と自宅との間の移動は労働者にとって労働役務の提供のために必要不可欠なものと考えられることから、通勤交通費は広い意味で「給与」に該当するものといえます。したがって、給与明細に通勤交通費の記載があるのは当然と言えば当然のことなのです。

■非課税所得について

 多くの人が通勤交通費を給与と考えていません。なぜ、このような誤解が生まれるのでしょうか? その答えは非課税所得の規定の仕方にあるのではないか、と考えられます。
 所得税法によりますと、その第9条の本文で『次に掲げる所得については所得税を課さない。』とし、その中で通勤交通費を挙げることにより通勤交通費が所得税非課税であることを表しているのですが、ここで大切なのは通勤交通費には所得税が課されない、という直接的な表現よりも「次に掲げる所得…」ということで通勤交通費が暗に所得(給与所得)に含まれている表現となっている、という点です。通勤交通費は所得税非課税、という部分だけが独り歩きしてしまいがちですが、条文の全体を見渡していただければ、と思うところです。
 よって、通勤交通費は給与なのか? という冒頭の問いに対する回答は以下の通りとなります。
  通勤交通費は給与に該当します。ただ、所得税法の規定により所得税が非課税となっているだけに過ぎません。

■通勤交通費が給与となることでの他への影響について

1.社会保険料、労働保険料の金額の算定
  申告書類の注意書きにも挙がっていますが、通勤交通費を含めた金額で申告する必要があります。 
2.定期同額給与との関連
  法人税の計算上、役員報酬の額については月ごとのむやみな変更はできないことになっていますが、その役員報酬の額には当然に通勤交通費相当部分も含まれます。ただ、交通機関による運賃改定がない限りは毎月一定額になると思いますので、通勤交通費が含まれるからといって直ちに定期同額給与から外れる、ということはないと思われます。
 
 いかがだったでしょうか? 意外と思い違いをしている方が多いのではないかと思いますが、正しく条文を理解していれば迷うことはありません。今後も条文やさまざまな規定の解釈をわかりやすくお伝えすることを心がけていきたいと考えております。引き続きよろしくお願い申し上げます。

Ⅲサイバーセキュリティの重要性

―知らず知らず情報流出の危険―
 不正アクセスという言葉をよく耳にすると思います。現代は様々な情報がデジタル化されてIDやパスワードなどでセキュリティをかけています。しかしながら、その管理している企業がサーバー攻撃を受けて情報流出というニュースが後を絶ちません。ではどうやって個人情報を守るべきか?残念ながら完璧な防御は永遠に確立できないでしょう。それでもできるだけ流出危機を防ぐにはどうすればいいか検証してみましょう。

■自己防衛で意識すべき情報

まずは、ネット上に流出しては困るものを整理してみましょう。
  1. クレジットカード番号
  2. 住所、氏名、年齢、電話番号
  3. 電子メールアカウント
  4. メールの内容
  5. 商品購入などのサイト上の行動履歴
  6. 本人確認情報(パスポートやマイナンバーなどのデジタルデータ)
  7. ネットバンキングの情報(アカウントやパスワード)
これらを前提に気を付けるべきサービスなどを見てみます。

■不正アクセス

1.手口
(1)脆弱性を利用した侵入
 ネットワーク機器やサーバー、OS、アプリケーションなどの脆弱性をついて行われることがあります。脆弱性が発見された場合はメーカーなどから配布される更新プログラムを実行することで脅威を回避できます。プログラムの更新を怠ったり開発中の期間に侵入を許してしまう可能性があります。OSのサポートが終わった場合は脆弱性が増しますので速やかにOSのアップデートをお勧めします。

(2)なりすまし
 何らかの不正な方法で入手したIDとパスワードを使い、アカウント所有者に成りすましてログインする方法です。単純で推測されやすいIDとパスワードを使っていると、不正アクセスのリスクが高まります。また、1つのIDやパスワードの組み合わせを様々なサービスで流用していると一度不正アクセスされると被害が拡大することも考えられます。従って、パスワードの定期的な変更や重複するIDやパスワードは避けるようにすることが大切です。
以下に事例を紹介しておきます。
①クラウドサービス
 クラウドサービスに預けるメリットはたくさんあります。写真データの保管や、スマホのデータを預けていれば、失くしてもデータは普及できたりします。ただ、クラウドサービスに預けたデータが流出した事件は結構あります。これらは、企業の落ち度ではなく、不正アクセスによる流出です。名前、誕生日、ニックネーム、ペットの名前、趣味などの情報をもとにユーザー名やパスワードを類推して侵入するという手口です。従ってわかりにくいパスワードなどを設定すると防ぐ確率は上がりますが管理が大変なこともあり、なかなか難しい問題です。
②インターネットカフェなどのだれでも利用できるパソコン
 誰が仕込んだかは別として入力情報を不正に取得するためにウィルスが仕込まれているかもしれません。また、情報入力後に履歴から個人情報を抜き取られる可能性もあります。大切な情報は自分自身のパソコンかスマートフォンで行うことが大切です。

(3)ウィルス感染
 不正アクセスは、マルウェアなどのウィルス感染によって発生することもあります。ウィルス感染させる代表的な方法は、ウィルスに感染させるファイルを添付したメールを送信して、ファイルを開いたパソコンなどにウィルスを感染させる方法です。メールは、取引先や顧客などを装った巧妙な手口で送られてくるケースもあるため、不注意や知識不足によって侵入を許してしまうことがあります。
 対策ソフトもありますが、送られてきたメールや添付ファイルは不用意に開けないことです。

(4)フィッシング
 メールやSNSを不特定多数に送信して偽サイトに誘導して個人情報を盗む手口です。特徴は送信元が一見すると信用できる企業からであり思わずクリックしてしまうように装っています。
令和5年上期では被害件数過去最多の2,322件、被害額約30億円が報告されています。
また最近増加傾向にあるのがスミッシングと呼ばれるSMSショートメールです。ランダムな数字の羅列でも登録番号があれば送れてしまいます。
 これには、送信元、ドメインを確認するようにすることが大切です。似たようなアドレスやドメインも存在しますので慎重さが求められます。

■上場企業の個人情報漏洩・紛失事件(東京商工リサーチ調べ)

 現在どれくらいそのような事件件数があるのかと実感していただくために上場企業と限定されてはいますが、抜粋させていただきます。
 「2023年調査」
 上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏洩・紛失事件は175件(前年比6.0%増)。漏洩した個人情報は、前年(592万7,057人分)の約7倍の4,090万で8,718人分(同590.2%増)と大幅に増えた。
 事故件数は調査を開始した2012年以降の12年間で、3年連続で最多を更新した。また、大型の事故が相次ぎ、漏洩した個人情報は2014年(3,615満1,467人分)を上回り、最多を更新した。
 このように、年々セキュリティは整備・改善されている中で件数・人員ともに増えています。
 
 IT・ICTが普及した現代、情報セキュリティは常に意識しておかなければならない大切なことです。ただし、セキュリティ対策に終わりはありません。新しい技術や新サービスが生まれれば、それに比例して脅威も生まれています。IDやパスワードの管理はノートなどアナログですると安全です。最近終活の本などたくさん出ていますが、最初にすることの1つとして自分のIDやパスワードをノートに書き出す。とのことです。パソコン上ではパソコンが本人しか入れなかったり、そもそもネットに繋がっていますので大切な情報の遮断は100%ではありません。つながらないアナログこそ最高のセキュリティとは皮肉なものです。

今月のブックマーク

「J-Net21」独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する、中小企業経営者の悩みや課題解決のサポートを目的とした情報サイトです。 

異業種交流会&経営戦略セミナーのご案内(TFG共栄会)

異業種交流会&経営戦略セミナーのご案内(TFG共栄会)

TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、中小M&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ!
健全性支援実績No.1を目指す!
Tax&Financial proGroup
TFG税理士法人
株式会社東亜経営総研
TFG M&Aルリエ株式会社

〒550-0011
大阪市西区阿波座1丁目4番4号
野村不動産四ツ橋ビル8F
TEL:(06)6538-0872(代表)
FAX:(06)6538-0896
編集委員長 藤本 清
TOPへ戻る