中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)

2025年1月号 No.401
謹賀新年
今年もどうぞよろしくお願いします。
TFGグループ 代表 田中洋子
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は、何かとご厚誼を賜りありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
どうか、皆様にとって本年が良い年になりますことを、心よりご祈念申し上げます。
最近、高収益な会社へ変化!『付加価値の向上』という言葉をよくお耳にされることかと思います。
※付加価値の求め方には2パターン(中企庁方式と日銀方式)あり、一般的には日銀方式による積上げ式で、「経常利益」+「金融費用」+「人件費」+「減価償却費」+「賃借料」+「租税公課」で求めることができます。
中小企業白書2023年の中小企業の経営方針の調査結果によれば、『新たな需要を獲得するために行動すべき』41.3%、『付加価値の向上に向けて行動すべき』47.1%、『損失を回避するために静観すべき(投資行動はしない)』11.6%と、88.4%の中小企業が投資行動に対して意欲的な結果となっています。実際に、投資行動に意欲的な中小企業の業績は全体から見ても高水準で経営に良い結果をもたらしているようです。
高齢化・人口減少の構造変化に加え残業規制や働き方改革、最低賃金の継続的な引上げ、被用者の適用拡大等、制度変更に対応するためには、決して容易なことではございませんが、『付加価値』を増大させる何等かの積極的な取組みが必要となってまいります。付加価値に占める人件費の分配(労働分配率)について常に意識し、人口減少が進むにおいては、従業員1人当たりの付加価値額(労働生産性)を増大さすためのアプローチが不可欠です。中小零細企業は、大企業と違ってこの指標が高止まりをしている状況です。
●『付加価値』向上のためには(中小企業白書より)
1.自社の強みや置かれている環境を踏まえ、まずは戦略を練る
(1)コストリーダーシップ戦略 (2)差別化戦略 (3)集中戦略
※マイケル・ポーターが提唱する3つの基本戦略
2.事業領域・分野の見直し、分析
(1)バリューチェーン(付加価値を生み出す工程:企画、開発・設計、組立・製造、販売、サービス)上の各工程のうち、どの事業の領域を対象とするのか。新たな事業領域への進出、既存の事業領域の買収等
(2)新事業分野への進出検討
ここ10年で、製造業16.6%、非製造業で14.2%、検討した企業を含めると約4割が新事業へ進出。進出分野は、成長分野である「環境・エネルギー」、「医療機器・ヘルスケア」、「AI・IoT」の順に多い。自社の技術やノウハウを結合することで新事業の分野への進出を検討してみてはどうでしょうか。
※進出へのきっかけは「外部イベントへの参加」、「既存社員からの提案」、「大学他研究機関・自治体・取引先からの要請・誘い」の順に多い。
3.製品・サービスへの差別化
(1)労働生産性に変化のあった差別化の取組み
①製造業:その他(独自の取組み)、付帯製品・サービスの開発、特定顧客向けの製品・サービス開発、製品・サービスの高機能化
②卸売業:製品・サービスの高機能化、広告・プロモーション強化
③小売業・サービス業:用途・デザイン・操作性で差別化された製品の開発
※差別化への取組み結果として企業の22.1%が単価上昇と数量増加が同時実現
(2)差別化へのきっかけ
①自社が保有する技術やノウハウを活かすという発想
②社会的な課題を解決するという発想
③自社顧客のニーズに応えるという発想
※製造業では上記③、非製造業では上記②が労働生産性のアップ傾向にあり。
(3)課題事項
①スキルや知識を有する人材の不足 ②人員数の不足 ③投資コストの負担
4.無形資産の有効活用
(1)経営資源の中ではヒトが最も重視
全般的に「技術者・エンジニア」次に「営業・販売人材」を重視
※国内ニッチトップ製品・サービス保有企業は、保有していない企業に比べて「技術者・エンジニア」「知的財産権・ノウハウ」、「経営者・役員」を最重視する割合が高く、「営業・販売人材」、「顧客網」、「資金」を最重視する割合が低い。
(2)知的財産権の活用
権利の使用やライセンスといった法的な側面に加え、自社の価値の見える化、社員のモチベーシ ョン、スキルアップ、交渉力の強化、販路開拓、事業承継にも有効。経営課題やニーズの把握で戦略的な権利取得、活用を検討。
※特許庁普及支援課の産業財産権専門官、INPIT知財総合支援窓口に一度ご相談されてはどうでしょうか。
(3)人的資本
欧米主要国と比較してGDPに占める能力開発費(OFF-JT)の比率が著しく低く、減少傾向にあるが、人材教育・能力開発投資を実施している企業は実施してない企業と比較して売上高研究開発費比率が高く、労働生産性の上昇幅が大きくなる傾向との結果。
(4)働き方改革
残業規制への対応をすることで、製造業では、従業員の満足度向上、非製造業では生産効率の向上を、最も重要な狙いと考える企業において労働生産性の上昇幅が大きくなる傾向との結果。
5.その他
(1)外部連携・オープンインベーション
同業種企業と連携する企業と比較し、異業種企業や大学と連携する企業の方が労働生産性の上昇幅が大きくなる傾向との結果。
付加価値が高まるということは、それだけ、そのサービスや商品などに対してご納得のいただける価値があるということになります。社会の課題は何か、顧客のニーズは何か、そして質と量の両面での人材不足については人を育成し、異業種も含めた外部との連携の活用も意識していただき、是非とも、『付加価値』を増大させ、更なる高収益な会社へと変化をさせていただきたいと思います。
末筆ではございますが、皆様の今後、益々のご発展を心より、スタッフ一同、心よりご祈念致しております。
Ⅰ新しい相続時精算課税とは
―その特徴とメリット及びデメリット―
近頃よく「相続時精算課税」というワードを耳にすることがあるのではないでしょうか?この「相続時精算課税」は令和6年1月に大幅に改正となった今注目されている贈与税の制度です。ここでは、新しくなった相続時精算課税の内容とメリット、デメリットについてご説明します。
■ 相続時精算課税の概要
相続時精算課税は贈与税の制度の一つです。贈与税の制度には「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」があります。暦年課税制度が贈与のあった年毎に基礎控除額110万円を控除した額に対して課税される制度に対し、相続時精算課税は贈与財産が特別控除額である累計2,500万円になるまでは贈与税では課税されずに、贈与をした方が亡くなった時に、相続財産に足し戻して相続税を計算する制度です。
■ 相続時精算課税の改正
相続時精算課税の控除は、税制改正前は特別控除額である累計2,500万円のみでしたが、令和6 年1月以降については、基礎控除額として年110万円も控除することができるようになりました。また、その年110万円部分は相続財産への足し戻しが不要となりました。
■ 相続時精算課税の特徴
1.適用対象
贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母や祖父母から、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の子や孫(養子を含む)に財産を贈与した場合において選択できる制度です。ただし、養子縁組をしていない義父母からの贈与は対象外です。
2.相続時精算課税制度選択届出書の提出
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、「相続時精算課税制度選択届出書」及び一定の書類を所轄税務署長に提出する必要があります。
3.累計2,500万円を超えた場合の一律20%の税率
相続時精算課税制度選択届出書を提出した贈与者と受贈者との間の贈与について、基礎控除額である、年110万円と特別控除の累計2,500万円を超えた場合には、一律20%の贈与税がかかります。
■ 新しい相続時精算課税の主なメリット
1.年110万円以下については申告不要
相続時精算課税を選択した場合、改正前については、どんなに少額であっても、贈与があった年については申告が必要でしたが、改正後は年110万円以下の贈与については申告が不要となりました。
2.年110万円までは相続財産への足し戻し不要
相続時精算課税は年110万円までの贈与は、相続財産に足し戻しが不要です。もう一方の贈与税の制度である「暦年課税」は、贈与者の相続開始時期に応じて相続開始前最大7年以内の贈与は、贈与がなかったものとされ、100万円を控除した残額が相続財産に加算されます。
3.値上がり確実な財産は相続税の節税に
相続時精算課税を選択した場合には、贈与時の価額で相続財産に足し戻されるため、贈与財産の値上がりが確実な場合には、相続税の節税になります。逆に相続時の価額が下がる場合にはデメリットにもなります。
■ 相続時精算課税の主なデメリット
1.暦年課税に戻ることはできない
一度相続時精算課税を選択すれば、その後に暦年課税が有利になると判明しても、暦年課税には 戻ることはできません。
2.「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができない
小規模宅地等の特例とは、相続した土地について一定の要件を満たせば、最大80%相続税評 価額を減額できる制度です。この小規模宅地等の特例は、相続時精算課税を選択している場合には適用できません。
3.孫の相続税額の2割加算
相続時精算課税を活用して孫に贈与した場合には、その孫は相続税の納税義務者となり、しかも、子が相続時に生存している場合には、その孫の相続税額は2割加算されてしまいます。
Ⅱクリティカルシンキングでベターな解決を
―あるべき方向へ導く思考法―
ロジカルシンキングという言葉はよく聞くようになりました。すなわち、物事を体系的に整理し、筋道を立てて矛盾なく考える思考法です。つまり「AだからB」「BだからC」「従ってAはCである」。というように思考の流れを解決する方法です。では、なぜ、前提にAを置いたのでしょう。つまりAを導き出していなくて、前提となっています。しかし、前提が変わればおのずと、結果も変わるでしょう。ここでは、この前提を導きだす思考方法としてクリティカルシンキングを使用します。この思考方法を身につければ、今後の事業にも役立つものと思います。
■ クリティカルシンキングとは
一言でいえば、「物事を鵜呑みにせずに吟味し、適切に疑う思考態度」のことです。
これまでの当たり前を覆し、これまでにない新しい切り口を見出すための思考方法です。
日本語に訳すと批判的思考となりきつい印象を与えますが、意味は前提条件が正しいものであるか、中立的な立場で分析しながら論理立てていく考え方ととらえた方がいいでしょう。
■ 背景
「VUCAの時代」つまり社会変化が激しく予測が困難な時代のことです。IT技術の進展や新型コロナウイルスの影響などにより、これまでの常識やビジネスモデルが通用しない状況になっています。従って今までの経験を活かしてや、他の事例に倣って通用する時代ではなくなってきております。
こういう時代では適切に疑う思考態度は、新たな市場を生み出す可能性を秘めた思考方法として注目されています。
■ 役割
ビジネスを行う上で様々な課題や問題が発生します。それを解決させるための思考法です。
では、どういった役割を担ってくれるのでしょうか。以下にまとめてみました。
コミュニケーション能力の向上 | 自分の主張に説得力を持たせ、相手の意図を正確に理解できる |
データ分析力の強化 | 数値データの意味を適切に解釈し、的確な判断ができる |
リスク管理の改善 | 計画に矛盾点や問題を事前に発見し、リスクを回避できる |
創造性の促進 | 既存の考えにとらわれず、新しいアイデアを生み出せる |
■ 4つの着眼点
1.情報の正確性を疑う
現在は情報があふれかえっています。何が正しくて何が間違っているのか常に疑ってかかる必要があります。ホリエモンの株価情報などホリエモンはそういった情報は確かだという世間の見る目があってもなりすましで被害にあう方もいます。間違った情報に基づいて判断すると大きな失敗につながる可能性があります。
2.前提条件を疑う
経験上、無意識のうちに様々な前提を人は立ててしまいます。年齢が上がると変化を好まず今までのキャリアの中から前提条件をあてはめてしまいます。前提条件を疑うことで新たな視点や解決策を見出せます。視点を変える、当たり前を疑うなど意識しないとできないものです。
3.推論を疑う
推論のプロセスを慎重に吟味することが大切です。これだけで論理的な飛躍や不適切な結論を導き出すことは避けられます。
4.論点が適切か疑う
的確な論点を設定すれば、議論の方向性が明確になり、限られた時間とリソースを最大限に活用できます。はたして本質的な問題に焦点が当たっているか、現況に即しているか、具体的で明確な内容になっているかの視点で見てみましょう。
■ トレーニング
1.日常的に
ニュースなどを見るときは、単に情報を入れるだけでなく、その背景や信頼性を考える。
日々の選択をなぜその選択をするのか理由を明確にする習慣をつける。
会話の中で意見の根拠を問う。
意識的に取り組めば徐々にスキルが向上していきます。
2.ビジネス
重要な意思決定の前に、複数の選択肢を比較検討する。
様々な意見に対して建設的な質問をする。
業種の動向や競合分析を定期的に行い、戦略を見直す。
クリティカルシンキングは、一朝一夕では身につくものではないですが、鍛えれば誰でも使える思考方法です。あらゆる場面でトレーニングを習慣化して思考力を鍛えましょう。そして、今までのしきたりや経験などに縛られない新しい発想をもってこのVUCAの時代を生き抜きましょう。
今月のブックマーク
「ツギノジダイ」朝日新聞が運営するWebメディアです。中小企業の課題解決のための情報提供がされています。
TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、中小M&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ! |
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編集委員長 藤本 清
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