中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
2024年12月号 No.400
Ⅰ年末調整の準備はできていますか?
― 令和6年分 年末調整の留意点、変更点について ―
時の経過ははやいもので、様々な出来事が起こった令和6年も12月を迎えるに至りました。会計事務所においては、各関与先様の年末調整のご指導、ご支援等を考える時期を迎えると、この後、年明けからの償却資産申告から確定申告までのことも頭に浮かんで来て、何となく気分がざわざわとし、「あぁ、また忙しくなるなぁ~。」と考えるものです。年末調整に携わっておられるご担当者様も、「年末調整」の準備をはじめられると、年の瀬を感じられるのではないでしょうか。
年末調整は、各従業員の方々のその年の給与所得と所得税額を確定して、源泉徴収税額との差額調整を行うことでそんなに難しいことではないと思います。特に、何年も年末調整事務をされておればそのようにお感じになられていると思います。ただし、年末調整事務の煩わしさはあります。各従業員の方々の家族で所得控除の対象になるかならないかの確認や、生命保険料控除証明書などの書類の収集にそれをお感じになるのではと推察致します。令和6年の年末調整においては、これらに加えて定額減税のことが年末調整事務の煩わしさ感を増すことになるのではと思います。
今、世間では所得税の103万円の壁、社会保険料の106万円、130万円の壁などの報道が新聞、テレビなどで毎日報道されています。最終的にどうするのか事が決まれれば年末調整事務に影響を与えることになるかと思いますが、先ずは令和6年分の年末調整の留意点、変更点を以下に記載します。
■年末調整時の定額減税(年調減税)
定額減税は令和6年6月に施行された制度で当年限定の措置です。納税者、配偶者及び扶養親族1人につき、所得税3万円、住民税1万円の合計4万円が控除されます。対象者は、令和6年分の所得税の納税者であること、日本国内に居住していること、所得税は令和6年分、住民税は令和5年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合、給与収入が2,000万円以下)であることです。
給与所得者の定額減税は、令和6年6月1日現在で在職していた方のうち、勤務先に扶養控除等申告書を提出している給与所得者(源泉徴収税額を甲欄で計算する方:甲欄適用者)の方は、令和6年6月1日以後に支払われる給与や賞与から定額減税額(月次減税額)を順次控除しています。
令和6年6月1日現在で在職したとしても、勤務先に扶養控除等申告書を提出していない給与所得者の方については月次減税の適用はありません。この場合、年末調整の対象者の方であれば年末調整で減税額を控除します。つまり、年末調整では、年調所得税額から定額減税額(年調減税額)を控除する年調減税事務を行うことになります。これが令和6年分における年末調整の留意点です。
年末調整で定額減税(年調減税)を実施した場合の年調年税額の計算の流れは次のようになります。
1.給与等の収入金額-給与所得控除額=給与所得控除後の給与等の金額
2.給与所得控除後の給与等の金額-所得控除額(扶養控除等)の合計額=課税給与所得金額
3.課税給与所得金額(1,000円未満切捨て)×税率―控除額=算出所得税額
4.算出所得税額-税額控除額(住宅借入金等特別控除)=年調所得税額
5.年調所得税額-年調減税額=定額減税控除後の所得税額
6.定額減税控除後所得税額×102.1%(復興特別所得税額)=年調年税額(100円未満切捨て)
※ 年調年税額と給与、賞与から徴収した源泉所得税の合計額を比較して、過不足額を精算する。
年の中途で同一生計配偶者の有無や扶養親族の数に変更があった方など、月次減税額と年末調整の際に算出される最終的な減税額との間に差がある場合には、年末調整で減税額の精算を行います。
なお、定額減税しきれない場合は、令和7年に調整給付されることがありますが、調整給付対象者となる場合には、個人住民税が課される市区町村から案内がなされる予定です。
■その他の変更点
令和6年の年末調整における変更点を記載しておきます。
令和5年度の税制改正により、令和7年分から扶養控除等申告書で記載すべき事項に前年の申告内容と変更がない場合には、移動がない旨を記載した申告書(簡易な申告書)を提供することができるようになりました。「簡易な申告書」とは、前年の扶養控除等申告書(前年の途中で異動申告書の提出を受けた場合は、前年の最後に提出を受けた異動申告書)の余白に記載した事項から異動がない旨を記載したものです。
次に、保険料控除申告書の簡略化されました。令和6年分から次の事項の記載が不要になりました。① 申告者が生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合のこれらの者の申告者との続柄、② 生命保険料控除の対象となる支払保険料等に係る保険金等の受取人の申告者との続柄、③ 地震保険料控除における保険等の契約者と申告者との続柄、などです。
住宅借入金等有する場合の所得税額の特別控除の特例の申告手続等の見直しが令和4年税制改正で行われています。年末調整の際に、令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除を受けようとする者は、住宅取得資金に係る借入金の残高証明書を「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」へ添付することが不要とされました。なお、この見直しには金融機関等におけるシステム改修等の必要性から経過措置が設けられており、金融機関等のシステム改修が間に合わないなどの場合には、これまで通り借入金の年末残高等証明書を提出又は提示することになります。
以上、令和6年分の年末調整における留意点を記載しましたが、ハイライトは「年末調整時の定額減税(年調減税)」ではないでしょうか。対象者の方がおられる場合は、注意してください。当年も年末調整の準備を例年通りしっかりして頂き、順調にトラブルなく進めていかれるようにお願い致します。
Ⅱインボイス開始から1年
―よくある質問Q&A ver.2.0―
インボイスが開始されてから1年が経過しております。質問の多い項目について以下で記載したいと考えます。
■免税事業者等からの仕入れに係る経過措置
Q:適格請求書等保存方式の開始後一定期間は、免税事業者等からの仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置について教えてください。
A:インボイス制度の開始後は、免税事業者や消費者など、インボイス発行事業者以外の者(以下「免税 事業者等」といいます。)から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受けることができません。
ただし、制度開始後6年間は、免税事業者等からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定 割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。
経過措置を適用できる期間 | 仕入税額相当額に対する割合 |
R5年10月1日~8年9月30日まで | 80% |
R8年10月1日~11年9月30日まで | 50% |
■新設法人等の登録時期の特例について
Q:新たに設立した法人が事業開始(設立)と同時に適格請求書発行事業者の登録を受けることはできますか。
A:適格請求書発行事業者の登録を受けることができるのは、課税事業者に限られます。
新たに設立された法人が免税事業者の場合、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに、課税選択届出書を提出すれば、その事業を開始した日の属する課税期間の初日から課税事業者となる ことができます。
また、新たに設立された法人が、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようと する旨を記載した登録申請書を、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出し、税務署 長により適格請求書発行事業者登録簿への登載が行われたときは、その課税期間の初日に登録を受けたものとみなされます。
■高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法
Q:高速道路利用について、ETCシステムを利用し、後日、クレジットカードにより料金を精算している場合、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書の保存により仕入税額 控除を行うことはできますか。
A:クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付するクレジットカード利用明細書は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成及び交付する書類では なく、また、課税資産の譲渡等の内容や適用税率など、適格請求書の記載事項も満たしませんので、一般的に、適格請求書には該当しません。
そのため、高速道路の利用について、有料道路自動料金収受システム(ETCシステム)により料金を支払い、ETCクレジットカード(クレジットカード会社がETCシステムの利用のために交 付するカードをいい、高速道路会社が発行するETCコーポレートカード及びETCパーソナルカードを除きます。)で精算を行った場合に、支払った料金に係る仕入税額控除の適用を受けるには、 原則、高速道路会社が運営するホームページ(ETC利用照会サービス)から通行料金確定後、適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録をダウンロードし、それを保存する必要があります。
なお、高速道路の利用が多頻度にわたるなどの事情により、全ての高速道路の利用に係る利用証明書の保存が困難なときは、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書と、 利用した高速道路会社及び地方道路公社などの任意の一取引に係る利用証明書をダウンロードし、併せて保存することで、仕入税額控除を行って差し支えありません。
■売手が負担する振込手数料相当額
Q:売手からの代金請求について、取引当事者の合意の下で買手が振込手数料相当額を請求金額から差し引いて支払うことで売手が負担する商慣行があります。この売手が負担する振込手数料相当額について、売手が代金請求の際に既に適格請求書を交付している場合に、必要となる対応を教えてください。
A:取引当事者間の契約関係等により、次の1と2に対応が分かれます。
1.売手が振込手数料相当額を売上値引きとする場合
売手は、振込手数料相当額について売上値引きとする場合、売上げに係る対価の返還等を行って いることとなりますので、原則として、買手に対して適格返還請求書を交付する必要がありますが、一般的には、こうした振込手数料相当額は1万円未満となると考えられますので、その場合は適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります。
2.振込手数料相当額について売手が買手から代金決済上の役務提供を受けた対価とする場合
売手は請求金額から差し引かれた振込手数料について仕入税額控除の適用を受けるためには買手から交付を受けた適格請求書の保存が必要となります。
Ⅲなぜ経営者は財務会計を理解しないといけないのか?
―企業は資本に見合うだけの利益を上げなければいけない―
この表題を見れば、経営者は簿記や仕訳も理解しないといけないのか?と思われるかもしれませんが、もちろん知っていれば、ベターですが、そこまでの細かいところはさておき、その結果出てくる財務会計の「全体像と基本的な仕組み」は理解しておく必要があります。会計が分かっていなくとも経営はできますが、経営者として人を使い責任を持って経営するならば財務会計を理解することは必須科目になります。
■財務諸表は何のために作るのか
1.税金を払うための原資資料
第1義的に思い浮かべるのはこれでしょう。
決算という区切りで数字をまとめその時の利益に対して税金を納める。経営者なら誰もが経験している年1回の業務です。
2.会社関係者への事業実態の報告
金融機関からお金を借りていて決算が終わると担当者が決算書を取りに来る(今は電子で報告することができます)。つまり会社関係者への報告書となります。この報告をすることによって金融機関からの円滑な融資などを引き出すことも可能となってきます。
仮に株式上場(IPO)をお考えであれば、投資家への開示が必要ともなります。
3.資本の集中・投資のヒントがある
経営者であれば感覚的に行うことができることもありますが、昨今の企業を取り巻く環境は変化が激しいです。今月売れた商品はもう2か月後には過剰在庫になったりすることは稀でもありません。そういった状況は数字に如実に表れてきます。資本を集中するための判断材料が財務諸表に現れるのです。また、経費も経営者自身はそれほど使ったと思わなくとも数字として突きつけられます。そういった流れなどを見る目は養う必要があるのです。
■経営者として財務諸表を見るときの視点
業種が違うと業態が違うといっても会社が行っている活動は同じなのです。(大局的視点)
この3つの活動は「財務3表」と呼ばれる損益計算書(PL)貸借対照表(BS)キャッシュフロー計算書(CF)で表しています。
このように、最初にお金を資本金・借入金などで調達し、商品の購入や設備購入などで投資をし、そこから利益を上げる。鷹の目で見るとこうなります。
1.貸借対照表(BS)
これは長期的な会社の成績表になります。
どうやって資金を調達し何に投資したかが記されています。新たに投資ができなくて運転資金で借り入れが多くなると債務超過に陥り新たな資金借り入れが難しくなるのもこれでわかります。
2.損益計算書(PL)
短期的(1年)の会社の成績表になります。
事業活動 あり経営者にとって難解なのです。
3.キャッシュフロー計算書(CF)
事業年度においてどのような現金の動きがあったかが分かるのがこの指標です。従って損益計算書とは少し違った数値が出てきます。
後半は仕組みの話になりましたが、数字はうそをつきません。鷹の目で財務3表を見ながら、ミクロ会計化して細かい口座が分かるようにしておけばこの3表だけで事業の動きが分かり、蟻の目で分析ができます。両方を使いこなすことによって、経営環境の厳しい現在の事業のかじ取り確かな数字をもって判断していく。財務会計の重要性が見えてきたのではないでしょうか。経営者の勘も決して侮れないものの確かなエビデンスに基づいた経営判断も使い分けすることによってより発展への確率が上がるものと信じています。
今月のブックマーク
「PIVOT」News Picksの元編集長が独立して運営しているサイトです。YouTubeをメインとした経営者向け動画を配信しています。
(再)事業承継・引継ぎ補助金のご案内
事業承継引き補助金は、令和7年度も継続。中小企業者及び個人事業主が事業承継、事業再編及び事業統合を契機として新たな取組を行う事業等について、その経費の一部を補助することにより、事業承継、事業再編及び事業統合を促進し、わが国経済の活性化を図ることを目的とする補助金です。(尚、令和6年度の内容です。令和7年度は変更もあり得ます。)
■補助対象事業者の要件
1.経営革新枠 経営資源引継ぎ型創業や事業承継(親族内承継実施予定者含む)、M&A
を過去数年以内に行った者、又は、補助期間中に行う予定の者
2.専門家活用枠 補助事業期間に経営資源を譲り渡す、又は譲り受ける者
3.廃業・チャレンジ枠 事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う者
■補助率及び補助上限額
補助対象 | 補助上限 | 補助率 | 対象経費 |
経営革新枠 | 600~800万 | 1/2 ※2/3 | 設備費・原材料費・委託費・広告費等 |
専門家活用枠 | 600万 | 買い手支援 2/3 売り手支援1/2 or※2/3 | 外注費・委託費・システム利用料等 |
廃業・チャレンジ枠 | 150万 | 1/2 ※2/3 | リースの解約費。解体費・廃業支援費 |
※要件によって増額します。
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編集委員長 藤本 清
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