中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
2024年11月号 No.399
Ⅰ源泉徴収義務
― 給与・役員報酬だけが対象ではないので再確認を ―
今年の6月より定額減税が実施され、事業者に対して事務負担が重くのしかかってきています。しかし、源泉徴収は給与や賞与だけでなく、他にも対象となる所得があります。報酬・料金等で、支払先に料金をきちんと期日までに支払っても、うっかりその源泉徴収税額を税務署に納付するのを忘れて、後日税務調査で指摘されることがあります。ここでは、居住者に対する分に限定して源泉徴収する所得の種類と、その内の「報酬・料金等」の分類と税額の計算方法をご説明いたします。
■所得税が源泉徴収される所得の種類
居住者に対して支払う所得で、源泉徴収されるものの所得の種類には以下のものがあります。
- 給与等で、俸給、給料、賃金、歳費、賞与等。
- 退職手当金等で、退職手当、一時恩給、社会保険制度等に基づく一時金等。
- 公的年金等で、(1)国民年金法、厚生年金保険法等に基づく年金。(2)一時恩給を除く恩給及び過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金。(3)確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等。
- 利子等で、(1)公社債及び預貯金の利子(2)合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用信託の収益の分配(3)勤労者財産形成貯蓄保険契約等に基づく差益(4)国外公社債等の利子等。
- 配当等で、(1)法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配(2)基金の利息(3)投資信託及び特定受益証券発行信託の収益の分配等。
- 報酬・料金等は次の項目でご説明致します。
- 定期積金の給付補填金等で、(1)定期積金の給付補填金(2)銀行法第2条4項の契約に基づく給付補填金(3)抵当証券の利息(4)貴金属等の売戻し条件付売買による利益(5)外貨建預貯金等の為替差益(6)一時払養老保険や一時払損害保険等の差益
- 保険業法に規定する生命保険会社、損害保険会社等と締結した保険契約等の基づく年金
- 匿名組合契約等に基づく利益の分配
- 特定口座内保管上場株式等の譲渡による所得等
- 懸賞金付預貯金等の懸賞金等
- 割引債の償還差益
- 割引債の償還金に係る差益金額
■報酬・料金等の源泉徴収
居住者に対して支払う報酬・料金等の源泉徴収について以下のものがあり税額は以下の通りです。税理士法人のような法人は勿論対象外です。
- 弁護士、公認会計士、税理士、計理士、会計士補、社会保険労務士、弁理士、企業診断員、測量士、 測量士補、建築士、建築代理士、不動産鑑定士、不動産鑑定士補、技術士、技術士補、火災損害鑑定人、自動車等損害鑑定人の業務に関する報酬料金。
税額=支払金額 × 10.21%
但し、同一人に対して1回に支払う金額が100万円を超える場合には、その100万円を超える部分については20.42% - 司法書士、土地家屋調査士、海事代理士の業務に関する報酬。
税額=(支払金額 - 1万円)× 10.21% - 外交員、集金人、電力量計の検針人の業務に関する報酬・料金。
税額=[その月中の支払金額 - (12万円 - その月中の給与等の額)] × 10.21%。 - 原稿、挿絵料、作曲料、レコードやテープの吹込料、デザイン料、放送謝金、著作権の使用料、著作。隣接権の使用料、講演料、技芸・スポーツ・知識等の教授・指導料、投資助言業務に係る報酬・料金、脚本料、脚色料、翻訳料、通訳料、校正料、書籍の装丁料、速記料、版下の報酬等。
税額=支払金額 × 10.21%
但し、同一人に対して1回に支払う金額が100万円を超える場合には、その100万円を超える部分については20.42% - 職業運動家等で職業野球の選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、プロレスラー、プロゴルファー、プロボウラー、自動車のレーサー、競馬の騎手、モデル等の報酬・料金の税額は、上記4と同様になります。
- 芸能人等に支払う出演料等の税額は、上記4と同様になります。
- 芸能人の役務の提供を内容とする事業の報酬・料金の税額は、上記4と同様になります。
- プロボクサーの業務に関する報酬・料金。
税額=(支払金額 - 5万円)× 10.21% - バー・キャバレー等のホステス、バンケットホステス・コンパニオン等の業務に関する報酬・料金。
税額=(支払金額 - 控除額)× 10.21%
控除額とは、(5,000円 × 支払金額の計算期間の日数)-その計算期間の給与等 - 役務の提供を約すること等により一時に支払う契約金の税額は、上記1と同様になります。
- 事業の広告宣伝のための賞金。
税額=(支払金額 - 50万円)× 10.21% - 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬。
税額=(その月中の支払金額 - 20万円)× 10.21% - 馬主に支払う競馬の賞金。
税額=[支払金額 -(支払金額 × 20% + 60万円)] × 10.21%
但し、個人の方で、以下に該当する場合は源泉徴収の義務はありません。
- 常時2人以下のお手伝いさん等の家事使用人だけに給与や退職金を支払っている方。
- 給与や退職金の支払がなく、弁護士報酬等の報酬・料金を支払っている方。
このように源泉徴収という方法で様々な税金が納められています。気づかずに徴収している場合もあるので支払が漏れていないか、よく注意が必要です。
Ⅱ医療費控除について
―確定申告に向けて今から準備しましょうー
毎年の確定申告で悩まれる方が多いものの一つに医療費控除が挙げられます。控除の対象になるのだろうか、そもそも支払の領収書どこに行ったっけ、などなど、確定申告で悩みが多いポイントになってきます。ですが、早くから準備を進めていければ恐れるものではありません。今回は医療費控除の内容を改めて確認するとともに、準備のためのちょっとしたアドバイスができればと思います。
■医療費控除とは
- その年の1月1日から12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。
医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。
(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円(注)
(注) その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額 - 令和8年12月31日までの間に、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の特定一般用医薬品等購入費を支払った場合において、自己がその年中に健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の健康診査や予防接種などを行っているときは、通常の医療費控除との選択により、その年中の特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金等により補填される部分の金額を除きます。)のうち、12,000円を超える部分の金額(88,000円を限度)を控除額とするセルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の適用を受けることができます。
なお、1と2はどちらか片方しか受けることができません。
■医療費控除の対象となる医療費の要件
- 納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支った医療費であること。
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります)。
■医療費控除を受けるための注意点
- 医療費控除は確定申告でしか受けることができず、年末調整では受けられません。
- 控除を受けるためには領収書等を基に作成した医療費控除の明細書またはセルフメディケーション税制の明細書を確定申告書に添付しなければなりません。
■医療費控除を受けるためのワンポイントアドバイス
- 対象となる医療費は自己のためのみならず自己と生計を一にする配偶者や親族の分も対象になります。自身ひとりだけで必要額に満たない場合でも、配偶者や親族まで合わせれば必要額に達することは十分に考えられます。ですので、ご家族の方が医療機関を受診された場合には、領収書等をしっかりと保存するようにしましょう。
また、領収書保存の際はまず個人別に分類していただき、その後相手先別に分類していただくと申告の際に必要になる明細書の作成がやりやすくなると思います。一度お試しください。
- 一般的な医療費控除の規定によると年間の医療費の支払額が10万円を超えないと医療費控除が受けられない、と思われがちですが、その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5パーセントの金額を超える部分が医療費控除の対象となり、必ずしも年間の医療費の支払額が10万円を超えなければならないわけではありません。また、収入金額でなく、所得金額が200万円未満となっていることにも注意が必要です。給与収入のみという方でしたら年間の収入金額290万円くらいが所得金額200万円の目安になりますので、年間の医療費の支払額が10万円を超えないようであっても領収書等は保存されておいた方がいいのではないでしょうか。
- 領収書がない場合でも社会保険診療については医療保険者から保険者に届く医療費通知を使って明細書を作成することもできます。ただし、その年分の社会保険診療がすべて網羅されているわけではありません(その年9月分までの支払い、という内容が多いようです)。足らずのところは領収書で対応するよりほかありませんので注意が必要です。領収書等の再発行については早めに支払先にご相談ください。
今回は医療費控除の内容と控除を受けるための注意点を中心に話をすすめてきましたが、大切なのは領収書等の整理です。確定申告までまだ時間がある、とお考えになりがちですが、医療費控除は事前の準備がものをいう所得税の減額方法です。領収書等の準備が十分でないという方はこの時期から動いておいた方がいいと思います。
Ⅲ 人材育成におけるフィードバックと改善
―中小企業での活用法―
人材不足が叫ばれる中、中小企業においては深刻な問題となっております。高い費用をかけて募集をかけても来ない。ということをよく耳にします。それならば、新卒をターゲットとし優秀な人材を採用しようという試みも、滑り止め程度で、内定を出しても直前でお断りされたりします。そうなると時間はかかるかもしれませんが、いかに今いる人材や中途採用した人を活用するかにかかってきます。それにはコストもかかることとなりますが、現在の状況ではベターな選択と言えるでしょう。中小企業においては指示待ち社員が増殖する傾向にあります。成長を待っていられない上司が具体的指示を出すケースが多いからです。組織として成長するためには、人の成長を促す仕掛けが必要となります。その一つの手法として今回「フィードバック」をご紹介いたします。
■フィードバックとは
人はなかなか自分を客観視することができません。あるべき姿やなりたい姿とアクションと照らし合わせて客観的な評価を相手にわかりやすく伝え、次のアクションに導くことです。
■フィードバックの種類
- ポジティブフィードバック
プラスの部分を評価することによって、やる気、モチベーションを高めることができます。具体的には、良い部分をピックアップして褒めたり、表彰したり、ポジティブな言葉や表現を使ったりすることが大きな特徴です。 - ネガティブフィードバック
今回テーマで取り上げた改善の部分です。改善点や問題点などを修正するべき部分を客観的に指摘することで、今後の軌道修正や成長につなげていく方法です。しかしながらネガティブな内容ですので大きな精神的ダメージを追うリスクがあります。伝え方、言葉の選び方、受け取る側の精神状態など様々の要因を勘案したうえで伝える必要があります。1つには、ポジティブフィードバックと合わせて行うのがいいでしょう。
中小企業では、上司だけでなく経営者も実施する側になるでしょう。一番気を付けなければならないのは、フィードバックが属人的にならないようにすることです。どうしても経験値からフィードバックしがちですが、受ける側とはもともと立場や資質が違うものです。その場では理解したつもりでもいざ実施する段階では、できないことも想定できます。(資質が同じなら経営者になっています)
さらに欠点の指摘をしてしまいがちです。改善という言葉でまとわれているが実は指摘ばかりに終始してしまうケースが多く見られます。こうなるといい話も耳を貸さなくなります。ポジティブフィードバックを入れなければ、人はついてこなくなるでしょう。皆様もお子様とお話しするときは目線を合わせると思います。人材にも時には、目線を合わせながら、フィードバックをしていくことが大切です。出来ていないことを指摘するのは簡単ですがその先に、できるようになるためにはどうフィードバックしていくかも問われます。1+1=2など簡単に答えが出るものではありませんが、根気よく丁寧に接することが望まれるでしょう。
今月のブックマーク
「経営者通信」経営者がよく見るサイトの一つです。経営者の考え方に触れてみてください。
(再)事業承継・引継ぎ補助金のご案内
事業承継引き補助金は、令和7年度も継続。中小企業者及び個人事業主が事業承継、事業再編及び事業統合を契機として新たな取組を行う事業等について、その経費の一部を補助することにより、事業承継、事業再編及び事業統合を促進し、わが国経済の活性化を図ることを目的とする補助金です。(尚、令和6年度の内容です。令和7年度は変更もあり得ます。)
■補助対象事業者の要件
1.経営革新枠 経営資源引継ぎ型創業や事業承継(親族内承継実施予定者含む)、M&A
を過去数年以内に行った者、又は、補助期間中に行う予定の者
2.専門家活用枠 補助事業期間に経営資源を譲り渡す、又は譲り受ける者
3.廃業・チャレンジ枠 事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う者
■補助率及び補助上限額
補助対象 | 補助上限 | 補助率 | 対象経費 |
経営革新枠 | 600~800万 | 1/2 ※2/3 | 設備費・原材料費・委託費・広告費等 |
専門家活用枠 | 600万 | 買い手支援 2/3 売り手支援1/2 or※2/3 | 外注費・委託費・システム利用料等 |
廃業・チャレンジ枠 | 150万 | 1/2 ※2/3 | リースの解約費。解体費・廃業支援費 |
※要件によって増額します。
TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、中小M&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ! |
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編集委員長 藤本 清
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