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TFGニュース 2024年9月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2024年9月号 No.397

Ⅰ経理部門のDX化

― 必要性、進め方について ―
 
 DXとは、Digtal Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略です。またその定義は、経済産業省によると「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」となっています。
 つまり、DXは単にITシステムやツールを導入して終わりではありません。データとデジタル技術を活用した経営全体の変革(トランスフォーメーション)を指すものです。これは、皆様の会社にITシステムやツールを操ることができる専門家がいるとして、その専門家をもって会社のDX化を進めることができるかというと、それは進めることはできないということです。ITシステムやツールは必要で、それを操作できる人材は確かに必要です。しかし、ITシステムやツールがDXではありません。あくまでDX化を推進するための手段です。その専門家が会社の経営を、経理で言うならば会社の経理業務を理解していて、DX化により経理業務をどうするかというビジョンを持っていなければDX化は無理であります。
 経理部門は人材が不足しやすい傾向にありますが、経理部門のDX化が注目される背景には「2025年の崖」や「電子帳簿保存法の改正」があります。「2025年の崖」とは、デジタル技術が発展する一方で、新しいシステムを使用することができず、既存のシステムを使用し続ける会社が今後も残存し、それにより経済損失が発生するという問題です。「電子帳簿保存法の改正」は2022年1月の電子帳簿保存法の改正です。電子取引で受け取った書類の紙媒体での保存が原則禁止され、電子データによる保存が義務付けられたことです。経理部門のDX化が注目される背景が、その必要性につながるのですが、先ずはその必要性から記載します。

 


■ 経理部門のDX化の必要性

 必要性としては次の4点があると思われます。
1.業務の属人化の解消
 経理業務は専門的な知識が必要であるため、実務の担当者が限られます。つまり、業務が特定の個人に集中し属人化が起こるリスクがあります。属人化とは、特定業務に関する手順や状況などの情報が作業担当者しか把握できておらず、周囲に共有されていない状態を指します。「○○さんがいないと、経理業務が停滞する。」ということです。経理業務の人材を育成するには時間がかかり、その間、慢性的人手不足になるケースが起こります。DX化により業務プロセスをデジタル化し、フローを可視化して、属人化を回避することが期待されます。
2.コストの削減
 DX化による経理システムやツールの導入で初期投資は発生しますが、デジタルツールを利用することで業務処理のスピード化が図られ迅速に処理することで、労働時間が短縮され、結果として人件費を抑えることもできます。さらに、紙ベースの文書管理費用の削減も期待できます。大量の書類を扱う経理部門では無視できない支出であり、経費削減が実現できます。
3.会社のガバナンス強化
 人手不足や業務の属人化は不正会計、改ざん、決算遅延などのリスクを高める可能性があります。経理業務を明確にし、管理を強化していくことが会社のガバナンス強化に寄与します。経理業務のDX化は業務プロセスを可視化し、業務内容の透明性や正確性が保たれます。
4. 多様な働き方の実現
 DX化は働き方の多様化を促進し、会社の柔軟性を高めます。従来、会社内の経費精算や企業間取引の情報は紙ベースで処理されているため、従業員は会社に出社をしなければ業務を行うことができませんでした。しかし、コロナ禍や自然災害は出社が困難になったケースの対策を必要とし、それは働き方の多様性を求めることになりました。経理業務のDX化は、従業員がどこからでもシステムにアクセスして業務を行うことを可能に、つまり、多様な働き方選択を促進します。働き方の多様化はワークライフバランスの改善につながり、従業員満足度や従業員エンゲージメントの向上が期待できます。

■ 経理業務のDX化の進め方

 経理業務のDX化の背景とその必要性を理解して進めるのですが、その進め方は悩ましいことと思います。
DX化の進め方はその会社の経理部門の人材や状況で差異はあると思われますが、次の手順で進めるのはいかがでしょうか。それは、ⓐ経理部門の業務内容の洗出し、ⓑペーパーレス化の推進、ⓒシステムやツールの選別と業務の自動化、であります。
1.経理部門の業務内容の洗出し
 DX化を進めるにあたってすべての業務内容を時系列で洗出し、業務フローや工数を正しく把握するこ とです。業務フローについては表を作成することをお勧めします。これは各業務で発生するデータを可視化することでDX化での課題を明確にします。また、必要性で記載した業務の属人化を防止する効果も期待できます。さらに、次のⓑの推進にもつながっていきます。
2.ペーパーレス化の推進
 ペーパーレス化とは既存の書類を電子化することですが、ⓐの過程が終了すれば既存の書類で電子化すべきものが明確になるのではないでしょうか。注意すべきは、既存の書類のすべてをペーパーレス化することはできないということです。業務上、紙媒体で運用する必要があるものは必ずあるはずです。要は、ペーパーレス化して電子化するものとそうしないものとを選別することです。なお、ペーパーレス化については、そのセキュリティをどうするか、そのルールの決定も重要であることを忘れないでください。
3.システムやツールの選別と業務の自動化
 上記手順の解決すべき課題に沿って、改善できる業務をシステムやツールを選別し、業務を自動化していくことです。自動化が進めば、経理業務のデジタル化、業務プロセスのデジタル化も実現するものと思われます。業務プロセスのデジタル化はDX化を進める過程で非常に重要です。システムやツールの選別は最終の工程で良いと考えます。いきなりシステムやツールを選別してDX化を進めると、導入すべきシステムやツールでDX化が制限を受けることもあり得ます。課題を明確にしてからシステムやツールを選別して業務を自動化する方が、DX化の効果を感じやすいからです。
 経理部門のDX化とは結局は、経理業務全体の変革(トランスフォーメーション)に他なりません。ITシステムやツールはそれを実現する手段と考えれば、決して不可能なものではないと理解して頂けると考えます。経理業務をDX化でどのようにしていくか、ビジョンを持つことが重要です。他部門のDX化も同様であると思われます。決して時代の流れに取り残されることなく、競争上の優位性を確立してください。

Ⅱ事務所・工場を賃借した時の税務上注意すべき点

― 全額損金になるとは限りません ―
 空き家等の流通促進の為、不動産屋さんに不動産の仲介を依頼した場合の仲介手数料の上限規定が見直され令和6年7月1日より施行されました。仲介手数料は一般的に、400万円以上の売買であれば依頼者の片方から3%プラス6万円、賃貸であれば依頼者の双方から合計で1ケ月分の賃料に1.1を乗じた金額といわれてきましたが、今回の見直しで、「媒介契約を締結する際に、売主又は貸主が合意すること」で、低廉な空き家等(物件価格が800万円以下の宅地建物)については売主より30万円の1.1倍を上限に、賃貸であれば、長期の空き家等(現に長期間使用されておらず使用の見込みがない宅地建物)については、貸主より1ケ月の2.2倍を上限に仲介手数料を受領できるようになりました。
 ここでは、空き家ではなく、事務所・工場を賃借した際に係る費用について税務上どのような取扱いになるのか御説明させていただきます。

■ 初期費用

 賃貸借契約時に支払うものとして以下のものがあります。家賃、管理費、共益費も該当しますが、後述のランニングコストで触れさせていただきます。
1.保証金と権利金
 賃貸借契約を解除した際に、返還を受ける保証金と返還されない権利金(敷引・礼金)があります。返還される保証金は、保証金勘定として資産計上し税務上損金になりません。しかし、賃貸借契約を解除し、返金を受けた際には、収益計上せず、保証金勘定から現金・預金勘定に振り替えます。
 権利金(敷引・礼金)の取扱いについては繰延資産(会計科目は長期前払費用勘定)として資産計上した上で、以下の3つに分類し償却していきます。一般的になじみの深いのは⑶です。但し、その支払金額が20万円未満の場合は一時の損金とすることができます。
 (1)賃借建物の新築の際に支払った権利金等で、その額が建築費の大部分を占め、建物の存続期間中賃借できるものは、その建物の耐用年数の7/10相当の年数で償却します。
 (2)上記①以外の権利金で、契約・習慣等によって明渡しの際、借家権として転売できるものは、その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10相当の年数で償却します。
 (3)上記⑴、⑵以外のものは、5年で償却します。但し、賃借期間が5年未満で、契約の更新に際し再び権利金等の支払を要することが明らかなときは、その賃借期間で償却します。
2.家賃保証料
 家賃を滞納した際に家賃を立替えてもらう為の保証委託料を保証会社に支払った場合、繰延資産(会計科目は長期前払費用)として資産計上し、その契約期間で償却します。
但し、その支払った金額が20万円未満であれば、一時の損金とすることができます。
3.保険料
 大家さんに対する「借家人賠償責任」や隣人に対する「個人賠償責任」が特約で付いたいわゆる家財保険については保険料として損金になります。
長期損害保険で、満期返戻金のある保険の場合は、その満期返戻金の原資となる積立保険料部分は保険期間の満了又は保険契約の解除若しくは失効の時まで保険積立金勘定として資産計上します。それ以外の保険料部分は損金となりますが、翌事業年度分は前払費用として対象期間に応じて損金としていきます。但し、支払日から1年以内の期間のものである場合は、「短期前払費用」に該当し、その支払った保険料に相当する金額を継続してその支払日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、期間に応じて損金とせず、一時の損金とすることができます。
4.仲介手数料
 不動産を購入した場合は、その仲介手数料を取得価額に算入します。その不動産が土地と建物であれば、仲介手数料を土地と建物に按分します、賃貸で借りる場合の仲介手数料は支払った事業年度で全額損金となります。

■ ランニングコスト

 毎月支払うものに家賃、管理費、共益費がありますが、契約期間の定めのある賃貸借契約で契約更新時に更新料が発生する場合もあります。
1.家賃、管理費、共益費
 その支払いの対象とする期間で損金とします。家賃について1ヶ月分超支払った場合は、前払費用で一旦資産計上とした上で、対象期間に応じて損金としますが、支払日から1年以内の期間のものである場合は、「短期前払費用」に該当し、その支払った家賃に相当する金額を継続してその支払日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、期間に応じて損金にせず、一時の損金とすることができます。
2.更新料
 繰延資産(会計科目は長期前払費用)として資産計上し、5年で償却します。但し、賃借期間が5年未満で、契約の更新に際し再度更新料の支払を要することが明らかなときは、その賃借期間で償却します。
但し、その支払金額が20万円未満の場合は一時の損金とすることができます。

■ 造作や修繕

 賃借人が、その賃借物件に造作をした場合は資本的支出として取り扱われます。また、修繕をした場合、自己所有物か、賃借物であるかにかかわらず、固定資産の使用可能期間を延長させるか、又はその価値を増加させるような支出は資本的支出として、一時の損金ではなく資本的支出として資産計上した上で減価償却します。

■ 退去時

 保証金の返還があれば、保証金勘定を現金勘定又は預金勘定に振り替えます。その際、退去に伴い原状回復費用が相殺されていれば、修繕費を計上します。勿論、別途、原状回復費用を請求され支払った場合も修繕費を計上します。
 内部造作等を資産計上している場合、賃借物件を無償返還するのであれば、固定資産除却損勘定でその資産額を消します。有償であれば、売価より帳簿価額を控除した残額を固定資産売却益として収益計上します。

Ⅲ データドリブン経営で新機軸を

-定量的に評価できない個人の勘や経験はもう古い?―
 データドリブン経営とは、蓄積されたデータを分析し、その結果をもとに戦略や方針を決める経営方法です。これまでは、経営者としての長年の経験や勘をもとに経営判断がなされてきました。しかしデータドリブン経営では、データという客観的な指標を使って経営判断する点が大きな特徴です。

■ なぜ今、データドリブン経営が注目されるのか

1.多様化する消費者の行動やニーズに対応できる
 大量生産の時代は終わり、多品種少量生産しかも商品サイクルがとても短く、消費者の購入方法もSNSや口コミレビューを参考にするようになりました。さらに最安値で買える通販サイトはないかを確認するなど購入までの行動が以前とは明らかに違います。従って消費者の行動やニーズを予測して対応することは非常に困難になってきています。
2.複雑化する業務に対応できる
 消費者の多様化するニーズや消費行動に対応するためには、業務も複雑化せざるを得ません。オペレーションやその周りの業務も当然のように増加します。これをより効率的に業務負担やコストを削減させることができます。
3.ビジネス変化に迅速に対応できる
 新しい商品やニーズが生まれては消え、ビジネスの変化はこれまで以上に高速化しています。そのような状況下で勝ち続けるためには変化を素早くとらえ、対応する必要があります。膨大なデータを収集し分析することで迅速に的確な判断ができるようになります。
4.データによる強みや課題を発見できる
 収集したデータに基づいて、自社の強みや課題を発見できるのもメリットとなります。経営者や従業員の感覚便りで判断していた部分をデータ分析で客観的にとらえることができます。これまで気づかなかった強みが発見されたり、課題が見つかったり、それを活かした新規ビジネスやサービス展開も考えられるでしょう。

■ データドリブン経営に必要な要素

1.データ活用基盤の構築
 経営判断するための材料となるデータが必要です。それを企業内の各種データを蓄積・管理するためのデータ活用基盤を構築することが必要になります。
2.分析ツールの導入
 蓄積したデータから経営に役立つ知見を導き出すための分析ツールが必要です。それを活用できる人材の育成は欠かせません。分野を絞って活用しやすいものから始めましょう。人の感情などは大変膨大なデータを必要としますので導入時には向きません。
3.データを活用する文化の醸成
 これが一番重要なのですが、ITだけでは実現できません。データ分析を行っても分析結果をビジネスに適切に活用しなければ意味がありません。データを活用する文化を育てていくことが重要です。

 これからは、多様化・複雑化する消費者の行動やニーズに対応するために、データドリブン経営は、はずせないものとなっていくことでしょう。2025には、マッキンゼーはこのデータドリブン経営は、呼び方が変わってスタンダードなものになると予測しています。データドリブン経営によって経営上の意思決定の迅速化や顧客ニーズの深い理解、客観的な自社分析などが期待できます。ワークライフバランスやリモートワークの促進、生産性の向上といった分野にも貢献できると思います。バックオフィスもクラウド化が進んで働き方改革も進むと思います。いわゆる作業という分野は、IT化して、1人当たりの生産性をあげ、物価上昇、賃金上昇に対応していくことがここ数年、経営者としてやらなければならいこととなります。取引先への交渉と合わせて考えてみてはいかがでしょうか。

今月のブックマーク

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会報2024年8月号に掲載されました。

書面添付件数累計1万件突破記念祝賀会

TKCの会報2024年8月号に掲載されました。昭和56年から書面添付の取組を開始し、10年後の平成3年には年間151件、20年後の平成13年には年間268件、直近の令和5年には年間390件を実践し、本年1月に累計1万件突破しました。TFGは健全会計支援で関与先企業の総合力形成に寄与し、事業の成長と発展につなげ、優良企業になっていただくことを念頭に書面添付に取り組んでまいりました。今後もより厳格な「チェック&チェック体制」や内部統制システムをブラッシュアップし関与先企業様の発展に寄与したいと考えます。

一部報酬表の見直しについて

デフレ時に報酬表を下方へ引き下げ現在まで据え置いておりましたが、昨年10月改正のインボイス導入、電子帳簿保存法の改正に伴い月次、年次での監査工数の増加、また今般の社会の環境の変化に鑑み、令和6年9月1日より一部(別表1及び消費税申告書分)報酬表の見直しをさせていただきます。現在契約中の月次報酬については更新時期に順次お声がけをさせていただくことにもなろうかと思います。何卒ご理解賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、中小M&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ!
TFGでは現在、時差出勤及びテレワークを限定的に実施しております。ご不便をおかけすることがあるかもしれませんがご理解賜わりますようよろしくお願い申し上げます。
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