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TFGニュース 2024年8月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2024年8月号 No.396

Ⅰ賃上げ税制・交際費の改正事項

―賃上げ税制の繰越控除等の取り扱いをメインとして―
 令和6年4月に税制改正法令が公布され、かねてより政府が力を入れている賃上げについて、税額控除制度の拡充が行われます。以下、その内容についてポイントを記述します。

 


■賃上げ促進税制について

 青色申告を行う法人や個人事業者の内、前年度に比較して従業員などに対する給与等が一定割合増加した場合、賃上げ促進税制による税額控除を受けることが従前から可能となっております。今回の改正では「中堅企業」の枠が新設され、大企業よりも税額控除の恩恵を受けられるように制度が改正されております。

■赤字の事業者でも最大5年間の繰越控除が可能

 今回の改正では、さらに赤字企業でも賃上げ促進税制の恩恵を受けられるように、税額控除額の繰越控除制度が新設されております。繰越税額控除制度の適用を受ける事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超えることが必要です。
賃上げを実施した年度に赤字が発生していた場合には従前では税額控除はできませんでしたが、税額控除額の内、控除しきれない金額(=未控除額)が発生した場合にはその未控除額を翌年度以降5年間にわたって繰越し、将来発生する法人税から控除できることとなっております。
 注意すべきこととしては、繰越税額控除制度の規定を適用する場合、同規定の適用を受ける事業年度終了時において中小企業者に該当する必要はないものの、繰越税額控除限度超過額の生じた事業年度終了時においては中小企業者に該当する必要があります。つまり、繰越税額控除限度超過額の生じた事業年度終了時に中小企業者に該当していれば、そのあと、資本金や従業員数の増加に伴い中小企業者から大企業又は中堅企業になった場合でも、過去に生じた繰越税額控除限度超過額の繰越控除が認められることとなっております。

■その他の賃上げ税制の見直し

 その他の賃上げ税制の見直しについては、給与等の支給額の範囲から控除する「その給与等に充てるため他のものから支払いを受ける金額(雇用安定助成金額及び役務提供の対価として支払いを受ける金額を除く)」が「補填額」と規定されております。その補填額には補助金等のうち、下記に記載の交付額が該当することとなっております。
  1. 補助金等の要綱、要領又は契約において、その補助金等の交付の趣旨又は目的がその交付を受ける法人の給与等の支給額にかかる負担を軽減させることであることが明らかにされているもの
  2. 1.にかかるもののほか、補助金等の交付額の算定方法が給与等の支給実績又は支給単価を基礎として定められているもの

■交際費の金額基準について

 交際費等の損金不算入制度において交際費の範囲から除外される飲食費の金額基準が1人当たり1万円以下(改正前は5,000円以下)に引き上げられましたが、その1万円以下の基準の適用にあたり、2以上の法人が共同で接待、供応、慰安の行為をして総額を分担した場合、飲食費等の総額を参加者数で除した金額が1万円以下である必要があるということが改めて通達で規定されております。

■最後に

赤字企業でも賃上げ促進税制のメリットを受けることができることとなりましたので翌期以降、黒字に転換できる見込みがあれば、給与等の増額を検討する余地はあるものと思われます。

Ⅱ保険金を受け取ったときの経理処理

- 意外と知らない受け取った時の税金 -
 事業活動をしていると保険との関わりは切っても切り離せなくなってきます。社員や保有財産に対するもしもの時の備えから節税対策まで、様々な用途で保険の加入を検討されることになるのですが、保険金を受け取るときのことを考えておられるでしょうか? また、事業活動とは関係ない個人的なところでも様々な保険とかかわりを持っている方も多いと思います。
 今回はそんな保険契約で実際に保険金を受け取った時どのように対応すればいいのか、事業上の場合と事業外の場合とに分けて確認していきたいと思います。特に事業外の保険金の取り扱いについては、多くの方が思い違いをされているように思われますので、この機会に確認いただけたらと思います。

■事業上で掛けていた保険についての保険金

 事業上で掛けていた保険についての保険金を受け取った場合には、生命保険、損害保険を問わず原則としてその受け取った保険金は事業上の収入として認識されます。ただ、生命保険については、支払った保険料について保険の種類、解約返戻率などから資産計上しなければならないものもあります。そのような保険についてはその資産計上していたものを取り崩し、その取り崩した部分との差額のみが収入として認識されることになります。
 よく節税対策と称して決算期末に生命保険の加入を検討される方がいらっしゃいますが、その期は節税できたとしても、保険金が支払われるときに利益になることを考慮に入れて、慎重に考えていただきたいと思います。

■事業外で掛けていた保険についての保険金

1.原則的扱い
 事業外で掛けていた保険についての保険金を受け取った場合には、原則としてその受け取った保険金は保険料負担者と保険金受取者との関係で以下の通りに課税関係が決まります。
 ・保険料負担者と保険金受取者が一致するときは、保険金受取者に所得税(一時所得)が課税されます。
 ・保険料負担者と保険金受取者が一致しないときは、保険金受取者に贈与税が課税されます。
  *なお、保険料負担者が亡くなられた方であるときは、保険金受取者に相続税が課税されますが、今回はこの点については深く掘り下げません。ご容赦ください。
以下表にまとめました。

被保険者

保険料負担者

保険金受取

税金

相続税

所得税(一時所得)

贈与税






  保険期間満了に伴い支払われる保険金や上記の要件を満たす死亡保険金などがこの規定の適用を受けることになります。

2.非課税とされる場合
 受け取った保険金について贈与税に該当する場合は確実に課税されますが、所得税に該当する場合は非課税となる部分があります。
所得税法によると、「心身に加えられた損害または突発的な事故により資産に加えられた損害に基づいて取得する保険金、損害賠償金、慰謝料など」については所得税を課さないことが明記されています。このため、これらに起因して受け取る保険金については所得税が課せられません。例えば、入院や通院に起因して支払われる給付金や特定の病気が発症したために受け取れる給付金や保険金、介護認定され、給付される介護一時金や介護年金などがこれに該当します。
 ただし、資産に加えられた損害についてその保険金等を使って修繕等を行った場合には、資産損失の額の計算にあたって受け取った保険金の額を除外しなければなりません。また、疾病により保険金が支払われた場合もその保険金の額は医療費控除の計算の際、その疾病に関連して支払った医療費の額から控除しなければなりません。
 
 いかがでしたでしょうか? 今回は相続の部分は割愛し所得税課税に関する部分を中心にご紹介してきましたが、実は意外とややこしいのが保険金受取時の対処法です。これらの話は確定申告の際に注意が必要な論点にもなります。保険会社からは、税務署に報告がいきますので漏れのないように対処する必要があります。確定申告はまだまだ先の話のように思われるかもしれませんが、保険金を受け取られるときには割とまとまった金額が動くことになりますから、これどうしたらいいの… ということにもなりかねません。こういったことが生じた場合には具体的な実情に即してお話させていただきますので、保険会社から届いた保険金明細を手元に置いて、ご遠慮なく申し出ていただければと思います。

Ⅲ 飲食業の倒産増加の要因

-上半期2年連続過去最悪を更新―
 飲食業の倒産が増加。東京商工リサーチの調べでは、2024年上半期(1-6月)飲食業倒産(負債1,000万円以上)は493件で(前年同期比16.2%増、前年同期424件)2年連続で過去最多を更新した。現在のペースで推移すると、年間では初めて1,000件超えとなる可能性も出てきた。となっている。実際に、あそこの店閉まっている、また変わったなど身近なところで変化を感じているのではないでしょうか。

■コロナ禍での国からの支援

1.持続化給付金の終了
コロナによる逆風に直面したものの、2020年5月から始まった中小法人・個人事業者のための持続化給付金で倒産が大幅に抑制されていました。ところが、コロナが5類移行したあと、客足が戻らず2021年2月をもって給付金も終了し、手厚い給付金で何とかしのいできたものの、ここにきてその蓄えも底をついてきたのが要因とも取れます。
2.コロナ関連融資の返済本格化
コロナ融資として元金返済猶予が最大5年となっており企業によってはもう少し早く返済開始になる企業もあるでしょう。その返済が本格化してきております。返済のめどが立たない企業がコロナ融資を受けた企業全体の12%に達しています。これは飲食業のくくりではないのですが「推して知るべし」でしょう。

■事業上の失敗

1.創業
自治体などの積極的な創業支援を背景に、飲食業は参入しやすい環境が続いています。しかしながら、ずさんな経営計画により、採算ベースに乗せることができないまま事業継続を断念するケースが多くなっています。居ぬきで借りられる場所があるとのことで、初期投資が少なく済みますが果たして集客が見込めるのか、詳細に調査した上での見込み違いではなく、単に居ぬきで借りられるという安易な判断で開業してもうまくいくことはほとんどありません。
2.販売不振
客足が伸びず、人が入っていなければ飲食業は入りづらいお店となってしまいます。
またコロナの期間にパワーユーザー層が変わり集客に苦戦するお店も増えています。
体力があれば改装・メニュー改定をして新規顧客の取り込みもできますが、過剰債務を抱える状況では、経費をかけずに集客を伸ばすのに頭を悩ますことでしょう。3月号の価値基準のところでラーメン店の1,000円の壁を掲載しましたが、価格に関しては、お客様とのギャップがなかなか埋まらないのが現状でしょう。
 
 外部環境や国の支援の終了など外的要因が引き金となり、倒産件数は増加していると捉えられます。一方、本当の事業者は安易に国の支援を使って借り入れを増やすことはせず、身の丈の経営をしています。誰も未来のことはわかりませんが、運転資金として借りたものは、どこに使ったか把握されていますか。そしてその資金は活きていますか。経営者の間では「死に金を使う」という言葉を耳にすることがあります。何に使ったか、なんで使ったかわからない支出を指すようです。会社経営には投資がつきものです。いずれ回収できるという意識を持っての支出を心掛けたいものです。

今月のブックマーク

「トリセツ」取り扱説明書が無料で一元管理できるサイト。取扱説明書の保管が必要なくなります。  

人材確保等支援助成金

外国人労働者就労環境整備助成コース

 外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などの知識不足や、言語の違いなどから労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にあります。この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部が助成金として支払われます。
 
〈 対 象 〉
 雇用保険被保険者となる外国人労働者(特別永住権者及び在留資格「外交」「公用」を除く)を雇用している事業主
 
〈 支給額 〉

賃金要件を満たした場合

賃金要件を満たしていない場合

支給対象経費の 2/3

(上限額72万円)

支給対象経費の 1/2

(上限額57万円)

 
〈対象となる経費〉
 通訳費・翻訳機器導入費(上限10万円)・翻訳料・弁護士、社会保険労務士等への委託料・社内標識類の設置、改修費(多言語の標識類に限る)
 
〈具体的な取り組み〉就労環境整備措置
必須メニュー

1.雇用労務責任者の選任

雇用労務責任者を事業所ごとに選任し、すべての外国人労働者と3か月ごとに1回以上の面談を行う。

2.就業規則等の社内規定の多言語化

就業規則等の社内規定のすべてを多言語化し、計画期間中に、雇用するすべての外国人労働者に周知する。


選択メニュー

 

①苦情・体制の整備相談

全ての外国人労働者の苦情又は相談に応じるための体制を新たに定め、母国語・使用する言語で苦情相談に応じる。

②一時帰国のための休暇制度の整備

一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇を取得できる制度を新たに定め1年間で1回以上の連続した5会場の有給休暇を取得させる。

③社内マニュアル・標識類等の多言語化

社内マニュアルや標識類等を多言語化し、計画期間中に、それを使用するすべての外国人労働者に周知する。



TFG夏季休暇のご案内

夏季休暇のお知らせ:令和6年08月13日~令和6年8月15日(16日より通常通り)
TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、中小M&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ!
TFGでは現在、時差出勤及びテレワークを限定的に実施しております。ご不便をおかけすることがあるかもしれませんがご理解賜わりますようよろしくお願い申し上げます。
健全性支援実績No.1を目指す!
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