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TFGニュース 2024年6月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2024年6月号 No.394

Ⅰ 仕入税額控除をめぐる諸問題

― 外注費と給与の区分に関する実務上の留意点 ―
税務上、労働サービスに対する対価を外注費とするか給与とするかの違いを明確に区分することは大変重要です。
区分するにあたっての留意点を記述した上で、過去の最高裁の判決の趣旨も追記しております。

■給与と外注費

給与と外注費の源泉徴収義務、消費税の課税・不課税の関連について記述します。

  1. 給与
 社員、アルバイト、パートなど色々な雇用形態がありますが、すべて給与支給時に所得税の源泉徴収義務が生じます。給与に対して消費税はかかりませんので消費税は不課税取引として取り扱われます。

 2.外注費
外注費の場合は原則、源泉徴収義務はありません。外注先への支払は消費税がかかりますので、消費税は課税仕入取引として取り扱われます。

 3.両者の区分けについて
外注費と給与との判断基準はインボイス交付の有無ではありません。会社とフリーランス契約していたとしても、働き方が雇用と同じであれば、「給与」と判断される可能性があることに留意が必要です。

■給与と外注費の判定基準

(1)    業務の「代替性」があるか否か
  ①    その契約にかかる役務の提供に関して、他人が代替して業務を行うことができるか否かという視点です。
  ②    代替して業務を行える場合、外注費となります。つまり、仕事の基準が充足されていれば、外注先のスタッフ等に業務を委託してもいいことになります。
(2)    外注先が「自らの計算」で、請求書の発行を行っているか否か
  ①    外注先が自らの計算で、請求書を発行して、支払いを受けている場合は基本的に外注費となります。請求書もなく、請負金額を発注元が時間単価で計算して支払っている場合、雇用契約があるものとみなされる可能性があります。
(3)    役務提供に当たって「指揮監督命令」を受けているか否か
  ①    外注者であれば、独自に行動することが基本ですので、発注元からの指揮監督命令を受けない場合、外注費となります。指揮監督命令を受けるということは雇用関係があるとみなされる可能    性があります。
  ②    別言すれば、給与については給与支給者との関係において、「なんらかの空間的、時間的な拘束・継続的に労務の提供があり、その対価として支給されるもの」であります。最高裁昭和56年        4月24日の判決でも同様の趣旨の判決となっております。
(4)    役務提供にかかる材料や工具類の提供があるか否か
  ①    外注先自体が材料などを独自に用意する場合、外注費になります。給与であれば、作業に使う材料や工具類は会社から用意されるものと考えられます。
(5)    まだ引渡しが完了していない完成品が不可抗力で滅失した場合、当該者が権利として報酬の請求を行うことができるか否か
  ①    請求することができない場合、外注費となります。外注であれば、期限内に商品の納入がない場合、対価の支払いはないものと考えられます。
上記の内容で判断しますが、契約内容、業務実態に応じて「総合的に判断」が行われることに留意が必要です。



■最後に

税務調査で会社が外注費処理していたものが給与と認定された場合、①源泉徴収義務を負う必要があること及び②仕入税額控除ができないこととなり、ダブルで影響を受けることになります。したがって、給与と外注費の区分については慎重に判断しておく必要があります。

Ⅱ 金融リテラシーの必要性

―株価高騰・新NISA実感ないのはなぜ―
 日経平均株価最高値更新、新NISAの開始、止まらない円安、物価高など連日ニュースで報道されています。その中で実感するのは、物価高だけだという方が多いのではないでしょうか。参加していないものに興味がないのが人間です。株も持ってない。新NISAも口座がない。そういう方にとっては実感を得るのは、なかなか難しい話ではないでしょうか。ではなぜ実感のない人が多いのか考えてみましょう。

■日本人の投資アレルギー

 日本人はお金を持っている人に対して憧れや、こうなりたいと思う人がいる半面、嫌悪感を抱く人が少なからずいます。これは、江戸っ子が「宵越しの金は持たない」が美徳のように語られたように文化的なものもあるのでしょう。お金を持っていても持っていないようにふるまったりするのは日本人特有のようです。そういった背景があり、投資に対してアレルギーを持っている人が多くいます。一昔は、証券会社の人を「株屋」とさげすむようなニュアンスで呼ばれてもいました。それには次の5つの理由があるからと考えられます。
1.    金融教育を受けていない
お金に対しての教育の場はありませんでした。お金の話をすることそのものがタブーとした雰囲気が日本人にはありました。このままでは世界から後れを取るばかりと政府は2022年から小中高での金融教育の義務化をスタートさせました。変な投資話にのって騙され、二度と投資なんかしないと決めた人もいます。しっかりした基礎知識を持って対応すれば騙されることも少なくなるでしょう。
2.    投資と投機の違いを分かっていない
投資と投機を区別できなければ、投資そのものも毛嫌いする場合があります。
投資とは未来の成長が期待できる資産にお金を投じるものです。投資の神様バフェット氏がコカ・コーラにと投資した話はあまりにも有名です。
似たような言葉で投機とは、機会にお金を投じるものです。為替の変化に大金を投じて儲けを狙ったり、一時はやったデイトレーダーなどが一日で売り買いを繰り返したりするのを指します。
3.    投資利益より手数料が高くつく
投資利益は出たけど、利益よりも手数料が高かった。という経験はないでしょうか。商品を売る側からすれば、宣伝などでコストがかかっているからその手数料は妥当です。となりますが、買った側は、利益出たけど手元資金が減るという現象が起きます。最近は購入経路も増えてネットでの購入が進んでおり、手数料も格段に下がっています。ただしアドバイスがないので、放っておいても売れる商品は知識のない人にとっては取り組みにくいものです。
4.    日本株で初心者が儲けを出すのはなかなか難しい?
儲ける人がいればその分損する人が出るのが株式投資です。初心者で利益を出すのは至難の業ではないでしょうか。
5.    バブル崩壊の後遺症
 バブル崩壊から30年以上経過しているにもかかわらず、未だにその心理的影響を受けているのではないでしょうか。やっと、そのころの株価を超すという現在、やっと投資環境が整ってきたと言えるのではないでしょうか

■金融リテラシー

 
「金融知識に自信がある人」の割合は、米国71%、日本12%と大きく開いていることが金融広報中央委員会の2022年の調査で発表されています。多少幅を持って見る必要がありますが、ある意味よくわからないという人が多い結果となっています。従って自信のある人がこれほどいなければ株高などの実感がないのは致し方ないのかもしれません。ただし、年齢別にみると年齢が高くなるほど自信のある人が増えているのは、やはり経験値の部分が大きく実際に投資などを行い身に着けていっているものと思われます。

■投資のイメージ

「お金持ちがするもの」「怖い・危ない」「ギャンブル」というイメージがついています。
ここ2年間で少しずつ改善されているようですが未だ根強くマイナスイメージがぬぐえていません。
若年層から大幅な改善が見られます。年配の方も経験で知識を得ているとは思いますが、基礎知識も習得する必要はあるでしょう。
 
専門家になる必要はありませんが、これほど、金融において多様化してくるとある程度の金融知識は身につけなければならないのではないでしょうか。そのことによって、今の株高などを肌で感じることができると思います。若い世代は、成人が18歳となり、いろいろな契約事項などが親の承認なしに行えるという時代に突入し、そういった金融の教育を受けています。そうしないとだまされる人たちが激増するからです。何も若い世代だけの話ではなく、これからは、避けて通るのではなくそういった投資に関しての知識は、どの世代でも必要となるでしょう。何から手を付ければいいかわからない方は金融庁のHPに今、小中高校生が何を学んでいるのかテキストなども載っていますので、そこから初めてはいかがでしょう。


Ⅲ 健康保険証の発行終了

 令和6年12月2日をもって新規発行はありません ―
 
 健康保険証の廃止を定めるマイナンバー法等の一部改正について、施行期日を令和6年12月2日とする施行期日政令が公布されました。これによりマイナンバーカードで健康保険証の利用登録を行ってマイナンバーカードで併用するようになります。猶予期間や資格確認書の発行の措置がありますのでマイナンバーカードを持たなくても医療機関の受診は一定期間できます。この仕組みをもう一度検証してみましょう。

■マイナンバーカード保険証のメリット

1.    医療機関での受付が自動化する
大きな病院などでは診察券や保険証を提出するのにも時間を要する場合がありましたが、カードを載せて顔認証かパスワードで終了となり、かなりなスピードアップになります。

2.    窓口で限度額以上の支払いが不要となる
日本の健康保険制度には、同じ月に支払う医療費の自己負担が高額になった場合、自己負担限度額を超過した分が払い戻される制度(高額療養費)があります。高額な医療費が必要になると判明している場合は、限度額適用認定証を事前に取得提示することで、窓口での限度額以上の支払いは発生しません。しかし、申請が間に合わない場合は限度額以上の金額を一時的に支払う必要があります。
マイナンバーカード保険証を利用すれば、限度額適用認定証の手続きをしなくても、限度額以上の一時支払が不要になります。

3.    就職・転職・引越しによる保険証の更新が不要となる
健康保険の加入手続きさえ完了すればすぐに使えるようになります。

4.    マイナポータルから過去の診療情報を閲覧できる
スマートフォンアプリ「マイナポータル」から過去の処方箋や特定検診情報などの診療情報を閲覧できるようになります。また、医師への情報提供に同意することで診療データを共有することも可能です。初めて受診する医療機関や調剤薬局などでも、データに基づいたより適切な診断・処方を受けられることが期待できます。

5.    医療費控除の確定申告が自動化する
マイナポータルとe-taxと連携することで医療費控除に関する計算・記入を自動で行えます。

6.    窓口負担費用が安くなる
窓口負担の金額がマイナンバーカードの方が安くなります。実は2022年4月に一度診療報酬を改訂したのですが、マイナンバーカードのほうが窓口負担が高くなり批判が続出し、10月に再度改訂して安くなるようにしたのです。


■マイナンバーカード保険証のデメリット

1.    利用可能な医療機関が100%になっていない
2024年1月時点ではまだ医療機関の90%程度しか設置が進んでいません。従来の保険証もまだ使えますので両方用意しておくと安心でしょう。

2.    個人情報漏洩リスク
医療機関ではICチップの電子証明書を利用してオンライン確認システムにアクセスして患者さんの医療情報を入手するだけですので漏洩リスクは少ないのですが、マイナンバーカードと暗証番号があれば、マイナポータルで閲覧でき、印鑑証明書なども発行できるので暗証番号を誕生日などにしておくと情報漏洩リスクは高まります。

3.    発行後、もとの健康保険証には戻せない
一度紐づけされてしまうと解除できない仕組みになっています。従来の健康保険証もまだ使えますので返納しないで持っておくのも方法の一つです。

4.    マイナンバーカード保険証を破損した場合全額自己負担
マイナンバーカードを破損したり水に落としたりしてしまったりすると、ICチップの情報を読み出せなくなる可能性もあります。そうなると、病院や薬局では、その人がどんな保険に加入しているか把握できませんので、最悪一時的に全額負担になる恐れもあります。
また、再発行は1~2か月かかりその期間も一時的に全額負担になります。(政府はこの場合保険組合で一旦負担することを検討しています。)

5.    デジタル庁はすべての責任を負わない
何らかの損害を被ったとしてもデジタル庁はすべての責任を負いません。誤登録、機械の故障、マイナンバーカードの毀損・紛失など、すべての責任は利用者にあります。

■デメリットが多いのになぜ導入

 いろいろとデメリットが上がっていましたが、政府としてのデメリットはありません。どれも利用者からみたデメリットです。
政府は元々マイナンバーカードを普及させようとしていました。マイナンバーカードに健康保険証がくっつけば、カード発行普及が進まない高齢者にも半ば強制的にカードを発行させることができるからです。従いまして使う側が注意を払って使用する必要があるということです。
 
 まだまだ広がる案が出てきております。運転免許証・各種国家資格証・在留カードなども検討に入っています。運転免許証に関しては前倒しできないかとの表明もありました。これについては住所変更手続きが無くなったり、免許更新の講習もオンラインにできたり利用者側にもメリットをもたらします。逆もあり、警察は、違反者の管理がしやすくなるというメリットもあります。
 さらにマイナンバーカードのデジタル化ということで普及率が高くなっているスマホと一体化することも検討されています。これでは、スマホを忘れたり、故障したときは、一種パニックになるのではないでしょうか。そういった世界がもうすぐそこまで来ているということです。

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書面添付累計1万件突破 記念祝賀会を開催しました‼

 
昭和56年から、書面添付を実施して参りました。
この度、令和6年1月に累計件数が1万件を突破しました。記念に事務所近くの貸し切り邸宅にて、祝賀会を開催致しました。これもひとえに皆様方のお力添えのおかげでございます。
誠にありがとうございます。今後も、組織人格の錬磨、独立性の発揮により、数多くの書面添付を推進し、関与先様の永続的な成長と発展、税務行政の簡素化など社会性あるプロフェッショナル集団を目指してまいりたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。


TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、中小M&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ!
TFGでは現在、時差出勤及びテレワークを限定的に実施しております。ご不便をおかけすることがあるかもしれませんがご理解賜わりますようよろしくお願い申し上げます。
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