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TFGニュース 2024年3月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2024年3月号 No.391

Ⅰ 定額減税について

― 令和6年分の所得税及び令和6年度の個人住民税の定額減税  -
 日本経済はバブル経済崩壊後から現在に至る30年間に及ぶ期間においてデフレ状態が続いています。デフレとは私たちが普段買っている日用品やサービスの値段(物価)が全体的に下がる現象です。デフレになるとモノが売れず、企業は業績が悪化し、従業員の賃金が下がり、設備投資や研究開発投資をカットするという悪循環に陥ります。この悪循環から脱却するには、従業員の賃金が上がり、消費が増えることで日用品やサービスの値段(物価)が適度に上がり、それが企業の売上げ、業績の向上につながり、新たな投資を生み企業が次の成長段階に入り、また従業員の賃金が上がるという好循環に変えるしかありません。政府は、特に従業員の賃金を上げることに着目して、賃上げ促進税制などの企業が従業員の賃金を上げる環境を整えてきましたが、今度は令和4年から物価上昇が止まりません。これはコロナ禍の収束によるエネルギー需要の高まりやロシアとウクライナの関係を起因とする燃料、資源価格の高騰、欧米の景気回復によるインフレで円安による輸入コストの上昇が影響しています。賃金上昇が物価上昇に追い付いていかないことでは国民の負担は増えるばかりです。
 そこで、令和2年度から2年間で所得税、個人住民税の税収が3.5兆円ほど増加する中で、国民負担率の高止まりが続いてきたことも踏まえ、これを納税者である国民に分かりやすく「税」の形で直接還元することとし、3.5兆円半ばの規模で減税を実施することにしました。これが令和6年分の所得税及び令和6年度の個人住民税の定額減税(特別控除)です。

所得税の定額減税

 令和6年分の居住者の所得税について、本人3万円、同一生計配偶者及び扶養親族(居住者に限ります。以下、「同一生計配偶者等」といいます)1人につき3万円の特別控除が行われます。ただし、令和6年分の「所得税の合計所得金額」が1,805万円以下の方に限ります。これはその方が給与収入のみの場合、給与収入2,000万円に相当します。
 給与所得者の方は、令和6年6月1日以後最初に支払いを受ける給与等(賞与を含みます)に係る源泉所得税額から順次控除します。減税額は控除しきるまで続きます。11月までに控除しきれない場合は、年末調整で控除されます。それでも控除しきれない場合は、給付になると見込まれます。また、控除した額は給与(賞与)支払明細書に記載が必要です。年末調整時に合計所得金額が1,805万円超になると見込まれる場合(年末調整の対象となる方に限ります)には控除実施額について調整します。なお、1,805万円超かどうかの勘案は、基礎控除申告書により把握した合計所得金額が用いられます。
 公的年金受給者の方は、令和6年6月1日以後支払いを受ける公的年金等(確定給付企業年金を除きます)に係る源泉所得税額から順次控除されます。
 給与所得者および公的年金受給者の方の同一生計配偶者等に係る特別控除の額は、原則として源泉控除対象配偶者で合計所得金額が48万円以下である方又は扶養親族で居住者について該当する方について算出します。同一生計配偶者には、源泉控除対象配偶者のうち、合計所得金額が48万円超95万円以下である配偶者は含みません。合計所得金額が48万円超の配偶者は、配偶者自身が減税の対象となります(事業所得者等の方の同一生計配偶者も同じです)。
 事業所得者等の方は、原則として確定申告の機会に減税が行われますが、予定納税対象者は、令和6年分第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る特別控除の額(3万円)を控除し、控除しきれない部分の金額は第2期予定納税額(11月)から控除します。また、同一生計配偶者等は簡易な手続きによる減額承認申請により、同一生計配偶者等に係る特別控除の額に相当する金額の控除を受けることができます。

住民税の定額減税

 令和6年度分の個人住民税について、本人1万円、控除対象配偶者及び扶養親族(国外居住者を除きます)1人につき1万円の特別控除が行われます。ただし、令和6年度分個人住民税に係る合計所得金額が1,805万円以下の方に限ります。住民税の合計所得金額は、分離課税の対象となる退職所得が含まれない等、「所得税の合計所得金額」とは異なる部分があります。
 給与所得者の方は、令和6年6月に給与の支払いをする際の特別徴収は行わず、『定額減税「後」の税額』を令和6年7月分から令和7年5月分の11ヶ月で徴収します。
 公的年金受給者の方は、『定額減税「前」の税額』をもとに算出した令和6年10月分の特別徴収税額から控除し、控除しきれない場合は、令和6年12月分以降の特別徴収額から順次控除します。
 普通徴収(事業所得者等)の方は、『定額減税「前」の税額』をもとに算出した第1期分(令和6年6月分)の税額から控除し、第1期分から控除しきれない場合は、第2期分(令和6年3月4日8月分)以降の税額から順次控除します。
 控除対象配偶者を除く同一生計配偶者(国外居住者を除きます。)については、令和7年度分の所得割の額から1万円を控除します。

給与源泉徴収義務者の事務上の留意点

事務上留意点は様々です、以下に主要なものを列挙します。
▪令和6年6月分から支給する給与から特別控除が実施されるため、早期に給与システム等の改修が必要であります。
▪源泉徴収税時の特別控除は、年末調整時を除いて合計所得金額に関わらず実施します。
▪源泉徴収義務者は、支払明細書、源泉徴収票の摘要欄に控除した金額を記載する必要があります。
▪源泉徴収税時の特別控除は、「主たる給与等の支払者」のみが実施し、「従たる給与等の支払者」は行いません。
▪令和6年6月1日以後に雇用されて扶養控除等申告書を提出した者の特別控除は、年末調整時に控除します(源泉徴収時には控除しません。)。

 以上が、令和6年分の所得税及び令和6年度の個人住民税の定額減税(特別控除)の概要です。少々、分かりにくい面があります。令和6年6月分の支給給与から実施となるため、もうすぐはじまります、特に、給与システム等の改修は今から手を打って、準備万端にしておいてください。

Ⅱ 消費税本則課税の罠

― 設備投資による消費税還付がその後の多額の納税に -
 昨年の10月1日よりインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートしました。令和5年12月に国税庁が公表した令和5年11月末日現在のインボイス登録件数は4,157,775件です。今回の件で消費税の免税事業者から課税事業者になられた方は相当数の方がいらっしゃり、単に、消費税をお客さんから預かったり、仕入れ業者等に消費税分を支払ったりするだけでなく、税務署に消費税を申告して消費税を納付される方も増えることになります。消費税の課税方式には、本則課税制度、簡易課税制度があり、また、今回のインボイス制度で2割特例制度ができました。簡易課税制度や2割特例制度は本則課税制度より消費税の納税額が少なくなったり、仕入税額控除の要件を満たすのが厳しい場合等に選択するのですが、消費税額を還付することはできません。しかし、本則課税制度の場合は消費税を還付することがありえます。本則課税制度の基本的構造は、お客さんから預かった消費税より、支払先に支払った消費税の方が多い場合に消費税が還付されます。つまり、通常は簡易課税制度を適用した方が本則課税制度より消費税額が少なくなる事業をされている方であっても、本則課税制度にしてその期間に不動産や車等を購入して、消費税を還付させるということが可能な場合があります。確かに、この還付(若しくは納税額が少なくなった)が実現すれば簡易課税制度でなく本則課税制度であったからこそ有利になったわけです。しかし、これは、その資産を購入した課税期間単独での比較です。下記に記載したケースで、3年縛りを受けた場合、この3年間のトータルでどちらが有利か、ひっくりかえるかもしれませんので、単に1年間で有利不利を検討するのではなく、3年単位で検討する必要があります。

高額特定資産の取得

 消費税の課税事業者が、簡易課税制度の適用を受けない課税期間に高額特定資産※1を取得した場合には、その取得があった課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間は消費税の納税義務が免除されません(いわゆる3年縛り)。また、この3年縛りの課税期間中、消費税の課税方式を簡易課税制度に変更して申告することはできませんし、2割特例制度の適用もできません。
 
※1 高額特定資産とは、棚卸資産又は調整対象固定資産で一取引単位につき、消費税抜き1,000万円以上のものです。また、調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物およびその付属設備、構築物、機械および装置、船舶、航空機、車両および運搬具、工具、器具および備品、鉱業権その他の資産で一の取引単位の価額が消費税抜100万円以上のものをいいます。
 一の取引の単位については、機械及び装置にあっては1台又は1基、工具、器具及び備品にあっては1個、1組又は1そろい、構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないものにあっては社会通念上一の効果を有すると認められる単位ごとをさします。
 また、令和2年4月1日以後に高額特定資産である棚卸資産が「納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税の調整措置」の適用を受けた場合には、その調整の適用は高額特定資産の仕入に該当します。

自己建設高額特定資産の取得

 消費税の課税事業者が、簡易課税制度の適用を受けない課税期間に自己建設高額特定資産※2で、その建設等に要した仕入等の支払対価の額の累計額が消費税抜き1,000万円以上となった日の属する課税期間の翌課税期間から、その建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間迄の3年間は消費税の納税義務が免除されません(3年縛り)。また、この3年縛りの課税期間中、消費税の課税方式を簡易課税制度に変更して申告することはできませんし、2割特例制度の適用もできません。
 本来、免税事業者であるけれども「適格請求書発行事業者の届出」を出したことで課税事業者となった課税期間での自己建設高額特定資産の取得をした場合を除きます。
※2 自己建設高額特定資産とは、他の者との契約に基づき、またはその事業者の棚卸資産もしくは調整対象固定資産として、自ら建設等をした高額特定資産をいいます。

調整対象固定資産の取得

 簡易課税制度の適用を受ける課税期間を除き、以下の期間中に調整対象固定資産を取得した場合には、その取得した課税期間を含む3年間は消費税の納税義務が免除されません(3年縛り)。また、この3年縛りの課税期間中、消費税の課税方式を簡易課税制度に変更して申告することはできませんし、2割特例制度の適用もできません。
 1.「課税事業者選択届出書」を提出したことで、課税事業者となった事業者の当該選択の強制適用期間(2年)
 2.資本金1,000万円以上の新設法人につき、課税事業者となった設立当初の期間(2年間)
 3.特定新規設立法人※3につき、課税事業者となった設立当初の期間(2年間) 

※3 特定新規設立法人とは、平成26年4月1日以後に設立した新規設立法人(その事業年度の基準期間がない法人で、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円未満の法人)のうち、以下の1と2のいずれにも該当する法人です。
 1.その基準期間がない事業年度開始の日において、他の者により当該新規設立法人の株式等の50%超を直接又は間接に保有される場合など、他の者により当該新規設立法人が支配される一定の場合(特定要件)に該当すること。
 2.上記1の特定要件に該当するかどうかの判定の基礎となった他の者及び当該他の者と一定の特殊な関係にある法人のうちいずれかの者(判定対象者)の当該新規設立法人の当該事業年度の基準期間に相当する期間(基準期間相当期間)における課税売上高が5億円を超えていること。

Ⅲ 価格基準はお持ちですか

― 何をもって物価高? -
 物価高が騒がれる中、皆様はモノの値段についてどのような感想をお持ちでしょうか。ラーメンの1,000円の壁。建設資材の高騰。マンションの値段。マスコミから流れてくる情報は、本当なのか?疑問に思ったことはないでしょうか。身近なところでは、食品の値上げは身に染みるもの。かなり実感があるのではないでしょうか。身近ではないものについては「対岸の火」ではないですが、あまりピンとこないのが正直なところではないでしょうか。マスコミに流れている話を紐解きながら物の価値基準を考えてみてください。

ラーメン1,000円の壁

 ラーメン業界には昔から「1,000円の壁」というものが存在する。その背景には「ラーメンは安い食べ物」という、ある意味「呪縛」のような固定観念が存在します。それは、歴史からくるもので、かつては中華料理店で出されていたラーメンは、一品料理に使われるものと同じスープで麺にもこだわることなく具材も他の料理で使われるものを流用していました。そのため、新たな仕入れや手間をかけることなく作れる料理であったことから安い食べ物との認識をしていたのです。
 従って、ラーメンはここ数年でラーメンだけを提供する専門店の登場によって劇的に進化してきており、その進化に消費者がついてきていないのが現状ではないでしょうか。
 「1,000円の壁」は消費者心理もそうですが、店主側にも大きな影響を与えています。値上げしないと材料も上がり人件費も上げないと人が来ない状況が打開できずに廃業に追い込まれる店が後を絶ちません。実際1,000円で売っても儲からない状況も出てきております。欧米などでは1杯1,500円は当たり前。皆様の価値基準も1杯1,000円以下でしょうか?食事は毎日するものですし安いに越したことはないですが、ラーメン店の未来を考えれば、価値基準は上げる必要はないでしょうか?

建設資材の高騰

4つの原因
1.ウッドショック・アイアンショック
 新型コロナウイルスの流行によって、職場内での感染を避けるために、自宅で仕事を行うリモートワークが世界中で流行しました。その結果、より良い居住空間を求め、マイホームの需要が高まり、木材や鉄の不足を招き高騰するという状況が、アメリカや中国で起こり日本に輸出される木材や鉄が減ったことが原因です。日本は木材や鉄の自給率も実は低く、輸入に頼っていました。
2.歴史的な円安
 現在は円高に振れていますが、150円台は32年ぶりの円安水準でした。そのため資材をほとんど輸入に頼っている日本ではどうしても資材の価格は上がらざるを得ない状況です。2021年12月末では、1ドル=115円だったものがわずか1年で30%も円安になれば単純に30%の値上げとなることは単純計算で出てきます。
3.電気料金の高騰
 2022年にロシアのウクライナ侵攻により、ロシアからの天然ガスの輸入がストップしたことが大きな要因で電気料金が高騰しました。代わりに原発再稼働などが選択できない(反対する声が一定数あるため)のも要因の一つです。
4.半導体不足
 半導体はあらゆる製品に用いられています。需要と供給のバランスが崩れ、供給不足が主な原因ですが、急に供給量を増やせないのが現状です。

マンションの値段

 マンションの価格はこの10年間で約1.9倍にまで高騰しています。一つには住宅ローンの金利が低いこと。建設資材のコスト高騰していること。円安の影響で外国人の購入が増えていること。様々な要因が重なり、高騰しています。今では東京都内での購入は一般サラリーマンでは手の届かないものとなっています。
 一般的には、あらゆるところで値上げが行われています。こういう状況下、私たちは、新たな価値基準を持つ必要があるのかもしれません。同じ商品でも品質・サービスがいいから高くないとか、逆に「安かろう悪かろう」商品は高いなど、判断基準を設ける必要があるでしょう。モノがあふれている現在、モノを見る目を養い判断する材料をそろえ、周りに左右されない価値基準を身に着けることによってより充実した生活を送れるのではないでしょうか。

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≪注意≫ 税務署をかたる詐欺メールにご注意ください。

 税務署からのお知らせは、e-Taxに登録しておけば個人宛や会社宛の情報を送ってもらえる便利な機能ですが、これを利用した詐欺メールが横行してきております。次の点、注意してください。
まず、送信元表記を確認してください。
 e-Tax(国税電子申告・納税システム)info@e-tax.nta.go.jp
の表記であれば税務署からの案内と判断できます。
上記以外では次の3点ご確認ください。
1. 税務署からのお知らせは、定型文でそれ以外のものは送ってきません。定型文は数がありますのでここでは割愛しますが、〈https://www.e-tax.nta.go.jp/topics/topics_oshirase_mail.htm〉でご確認ください。
2. 税務署からのメールには添付ファイルはありません。従って添付ファイルが添付されている場合は、取り扱い には十分ご注意ください。
3. 税務署からのお知らせは、メッセージボックスに情報が格納された場合などに送られてきます。心当たりのない方はリンク先をクリックしないでください。また心当たりのある方でも、URLを確認してからクリックするなど、慎重に対応する必要があります。
最後に、こういった情報は日々更新されていきますのでよくご確認の上、ご注意ください。
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