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TFGニュース 2024年2月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2024年2月号 No.390

Ⅰ 災害発生時の確定申告

― 期限は? 提出方法は? 内容は? ー
 今年は令和6年能登半島地震が1月1日に発生するという、誰もが想像していなかった波乱の幕開けとなってしまいました。こんな時、個人の確定申告はどうなるのでしょうか? 今回の令和6年能登半島地震をモデルケースとして、災害が発生したときの確定申告への影響について触れていきたいと思います。
 ご説明の前に、今回の地震が1月1日に発生したがゆえに考慮すべきポイントが2点あります。一つは地震発生時点で昨年、令和5年分の確定申告が終了していない、という点です。もう一つは今回の地震が令和6年になってからの発生であるため、この2月3月で行われる令和5年分の確定申告に地震の影響を反映させることができず、1年先の令和6年分の確定申告ではじめて影響が認識されることになる、という点です。したがって、今回のご説明は令和5年分の確定申告と令和6年分の確定申告とに分けて議論を進めていきます。

令和5年分の確定申告について

 先にも触れたとおり今回の地震の影響が反映されないため、内容的には例年の確定申告と変わるところはありません。修正が入っているのは申告・納付の期限です。
 石川県、富山県に納税地のある方は確定申告とそれに基づく納付を含め、1月1日以降に期限の到来するすべての手続きについて特別な手続きを経ることなく自動的に期限が延長されました。いつまで延長するのかについては今後の状況推移を見ながら改めて通知がありますが、この通知は定めた期日から少なくとも2か月前までにはあるはずですので、その通知があるまでは申告・納付について心配することはありません。
 上記以外の方であっても、今回の地震で被災し申告・納付が困難となっている場合には、納税地の所轄税務署に申請を行うことにより上記と同じ取り扱いを受けることができます。この申請は当初の期限を経過し状況が落ち着いた後で、申告・納付と同時に行うことも可能です。

令和6年分の確定申告について

 令和5年の確定申告が終わっていない状況ですので、申告・納付の期限については今のところ何も情報はありません。内容については今回の地震の影響についてここではじめて考えることとなるのですが、その対処の仕方について主なものをご紹介したいと思います。

1.事業所得や不動産所得の計算における災害による損失の金額の処理
 今回の地震により事業用資産や棚卸資産などに被害を受けた個人事業者の方は、その損失の金額を事業所得や不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます(保険金などにより補てんされる部分の金額は除きます)。このことで事業所得や不動産所得の金額がマイナスとなった場合、他に所得がある場合には損益通算がされますが、それでもなおマイナスが残る場合、そのマイナスの金額(これを「純損失の金額」といいます)については以下のように取り扱われます。

①青色申告の場合
 その純損失の金額をその年の前年に繰り戻して還付の請求をするか、又はその年の翌年以後3年間(※)に繰り越して、各年分の総所得金額等から控除することができます。
②白色申告の場合
 純損失の金額のうちに被災事業用資産の損失の金額があるときは、その部分の金額を翌年以後3年間(※)に繰り越して、各年分の総所得金額等から控除することができます。
※期間については3年というのが原則的な取り扱いになるのですが、特定非常災害として指定された災害により損失が生じた場合は、一定の純損失の金額の繰越期間が5年になります。この指定がされたという情報は今のところありませんが、今回の地震がこの指定を受けないということは考えられませんので、期間については5年間とみて差し支えないものと思われます。


2. 住宅や家財に災害による損害を受けた場合の処理
今回の地震により住宅や家財などに損害を受けた方は、確定申告において所得税法に定める雑損控除の方法、災害減免法に定める税金の軽減免除による方法のどちらか有利な方法で所得税及び復興特別所得税の軽減又は免除を受けられる場合があります。
(1)雑損控除
 生活に通常必要な資産につき生じた損失の金額(保険金などにより補てんされる部分の金額は除きます。これを「雑損失の金額」といいます)がある場合には、以下の金額のうちいずれか多い方の金額を損失発生年の所得金額から控除します。 
 A雑損失の金額-その年の所得金額の1/10
 B雑損失の金額のうち災害関連支出の金額-5万円
  
*「災害関連支出の金額」とは、災害により滅失した住宅や家財などの取壊し、除去、原状回復費用など災害に関連して支出したやむを得ない費用をいいます。
その年の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後3年間(※)繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。
※期間については前述の純損失の繰越の場合と同様、5年間と考えて差し支えないものと思われます。

(2)災害減免法に定める所得税の軽減免除
 住宅又は家財の損失額 (保険金などにより補てんされる部分の金額は除きます)がその価額の1/2以上である場合には、その年分の所得金額に応じ一定の金額の所得税が軽減または免除されます。ただし、災害発生年の所得金額が1,000万円を超える場合には原則としての規定の適用はありません。また、減免を受けた年の翌年分以降は減免を受けられません。
 今回の地震は石川県を中心とした地域が大きな被害を受けており、私たちが普段生活している近畿地方には直接的な被害は大きくはないものの、いつこのような災害が降りかかってくるかわかりません。その時に備えて知識として持っておくことが大切ではないでしょうか。

≪追記≫
 ここまでの内容は1月末時点で施行されている法令や発表されている告示等に基づいていますが、2月2日、国税庁のホームページで今回の令和6年能登半島地震が令和5年中に発生したものとみなして所得税の計算が行えるような措置を講ずる旨の閣議決定があったとの情報がアップされています。今後の動向に注意が必要です。

Ⅱ 空き家に係る3,000万円の譲渡特例

― 実務上の留意点 -
TFGニュースレター令和5年12月号で一部ご紹介させていただきましたが、少し掘り下げてご案内させていただきます。令和5年の税制改正にて、空き家に係る3,000万円控除の特例の見直しが行われております。その適用にあたっての留意点についてご案内いたします。

概要

 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。これを被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の「特例」といいます。

被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等とは

1.被相続人居住用家屋とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、以下の4つの要件すべてに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限ります)を言います。
2.被相続人居住用家屋の敷地等とは、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場足は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地またはその土地の上に存する権利をいいます。

〈「特例」の適用を受けるための要件 〉
1.売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人家屋の敷地等を取得したこと。
2.次の(1)又は(2)の売却をしたこと。
(1)相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
 ① 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されたことがないこと。
 ② 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。
(2)相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の「取り壊し等」をした「後」に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
 ① 相続の時から取り壊しの時まで事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていないこと。
 ② 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと。
 ③ 取り壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。
3.相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
4.売却代金が1億円以下であること。

主な改正事項

主な改正事項は以下のとおりであります。


改正前
改正後
適用期限
令和5年12月31日まで
令和9年12月31日まで
耐震リフォーム要件(家屋を含む譲渡)
譲渡日までにその家屋が耐震基準に適合
譲渡日から譲渡年の翌年2月15日までにその家屋が耐震基準に適合
除却要件(敷地のみ譲渡)
譲渡日までに家屋を除却
譲渡日から譲渡年の翌年2月15日までに家屋を除却
特別控除額
3,000万円
同左
相続人が複数名の場合の控除
各々3,000万円
相続人が3人以上の場合、1人当たり控除額2,000万円

Ⅲ 経営者保証に新たな施策

― ガイドラインの緩和で使いやすく -
 平成25年12月に公表された経営者保証ガイドラインで「法人と経営者の明確な区分・分離」「法人の資産・収益で借入返済が可能」「適時適切な財務情報の開示」の要件を満たすことによって、経営者保証がなくても融資が受けられる可能性があるとしています。ところが現実は、70%の企業はまだ経営者保証を提供した融資になっており改善されているとはいいがたい状況です。そこで「保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする信用保証制度」というより要件を緩和した新制度が制定されました。経営者保証の代わりに保証率の上乗せすることにより保証機能を代替する手法で経営者保証を提供しない融資を実現させようというものです。これは3月15日より申込受付開始となり、2月16日より要件確認などの事前審査が開始されます。
 また、この制度の活用を促すため新制度における「上乗せ保証料」について、3年の時限立法で軽減措置が取られます。以下まとめておきます。

対象要件

1.  過去2年間(法人設立日から2年経過していない場合は、その期間)において貸借対照表、損益計算書等その他財産、損益又は資金繰りの状況を示す書類を当該金融機関の求めに応じて提出していること。
2.  直近の決算書において代表者への貸付金等がなく、かつ、代表者への役員報酬、賞与、配当等が社会通念上相当と認められる額を超えていないこと。
3.  直近の決算において債務超過ではないこと又は直近2期の決算において減価償却前経常利益が連続して赤字ではないこと。
4.  上記1.及び2.については継続的に充足することを誓約する書面を提出していること。
5.  中小企業者が保証人の保証を提供しないことを希望していること。

保証率

1. 通常の保証率に、上記3.の要件を両方とも満たしている場合は0.25%、どちらか一方のみ満たしている場合は0.45%上乗せを行う(2期分の決算書がない場合は0.45%の上乗せ)。
2. 事業者負担軽減のため、時限措置として、上乗せした保証料の一部について軽減措置を実施。

軽減措置

令和7年3月末までの保証申し込み分0.15%
令和7年4月から令和8年3月まで保証申し込み分0.10%
令和8年4月から令和9年3月まで保証申し込み分0.05%
上記%の保証料は国の補助となります。

この機会に、先に述べた要件を満たしいていれば、経営者保証は提供しないと声を挙げてもいいのではないかと考える次第です。

今月のブックマーク

 今月のブックマーク
定型文やクリップボードの履歴を最大10,000件管理できる「Clibor」
簡単シンプルな操作でありながら高機能です。メールなどよく使う定型文はコピペが簡単。

   https://chigusa-web.com/clibor/

≪注意≫ 税務署をかたる詐欺メールにご注意ください。

 税務署からのお知らせは、e-Taxに登録しておけば個人宛や会社宛の情報を送ってもらえる便利な機能ですが、これを利用した詐欺メールが横行してきております。次の点、注意してください。
まず、送信元表記を確認してください。
 e-Tax(国税電子申告・納税システム)info@e-tax.nta.go.jp
の表記であれば税務署からの案内と判断できます。
上記以外では次の3点ご確認ください。
1. 税務署からのお知らせは、定型文でそれ以外のものは送ってきません。定型文は数がありますのでここでは割愛しますが、〈https://www.e-tax.nta.go.jp/topics/topics_oshirase_mail.htm〉でご確認ください。
2. 税務署からのメールには添付ファイルはありません。従って添付ファイルが添付されている場合は、取り扱い には十分ご注意ください。
3. 税務署からのお知らせは、メッセージボックスに情報が格納された場合などに送られてきます。心当たりのない方はリンク先をクリックしないでください。また心当たりのある方でも、URLを確認してからクリックするなど、慎重に対応する必要があります。
最後に、こういった情報は日々更新されていきますのでよくご確認の上、ご注意ください。
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