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TFGニュース 2023年12月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2023年12月号 No.388

Ⅰ 所得税の影響を受けない金融資産について

― NISA・iDeCoってなんだろう ―
 令和5年もいよいよ終わりが近づき、年末調整や確定申告を通していやでも所得税と向き合わなければならないシーズンとなってきました。
 ところで、所得税の影響を受けずに自己の財産を増やしていく方法としてNISAやiDeCoといった制度があるのですがご存じでしょうか? 今回はNISA、iDeCoについてご説明するとともにそれぞれのメリット・デメリットから見えてくる活用方法にも触れていきたいと思います。
 ご説明の前に注意点を2点ほど挙げておきます。一つはNISA、iDeCoともにあくまでも投資ですので投資額が保証されているわけではない、という点です。もう一つは所得税の優遇を受けられるのは資金を拠出したときですが、実際に払い戻しを受けられるのは5年なり10年といった期間を経てからとなる点です。これらの注意点を念頭に置きながら読み進めていただきたいと思います。

NISAについて

NISAは令和6年1月1日から制度変更されることが決まっています。ここでは新制度の内容をご説明するとともに、現行制度との違いを明らかにすることで現行制度の内容にも触れていきたいと思います。

  1. NISAとは
    金融機関に特定の非課税口座を開設することでその口座内で運用した上場株式等に係る運用益・配当金・分配金が非課税となる制度のことをいいます。通常でしたら上場株式等に係る運用益・配当金・分配金には所得税と住民税合わせて20.315%の税金がかかるものがNISAを使うことで非課税となり、この分手取りが増えることになります。 

  2. 新制度の内容
    令和6年からスタートする新制度では「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠組みが設けられ、この2つは同じ非課税口座の中で併用して利用することができます。
    「つみたて投資枠」とは一定の公募等株式投資信託等を対象商品として契約に基づき定期的かつ継続的に投資していく方法で、年間の投資額の上限は120万円になります。    
    「成長投資枠」とは上場株式や公募株式投資信託等を対象に投資していく方法で、年間の投資額の上限は240万円です。これら2つの枠組みは併用できますので年間最大で360万円の投資が可能となっています。
    「つみたて投資枠」も「成長投資枠」も非課税口座の開設可能期間の上限がなくなり恒久的に非課税口座の保有が可能となります。また、非課税口座内の商品の保有期間の上限もなくなり、より長期的な観点からの資産運用が可能となりました。
    なお、生涯で非課税となる金額は1,800万円(そのうち成長投資枠は1,200万円)までとなっていますが、口座内の商品を売却した場合にはその枠を再利用することができます。 

  3. 現行制度との違いについて
    ・現行制度でも「つみたてNISA」と「一般NISA」の2つの枠組みがありましたがどちらか1つ
    を選択する制度となっていました。
    ・年間の投資額の上限は「つみたてNISA」が40万円、「一般NISA」が120万円でした。
    ・非課税口座内の商品保有期間は「つみたてNISA」が最長20年、「一般NISA」が最長5年でし
    た。
    ・障害で非課税となる金額は「つみたてNISA」が800万円、「一般NISA」が600万円でした。
    売却はできますが、その枠を再利用できませんでした。

iDeCoについて

 iDeCo(個人型確定拠出年金,イデコ)とは、国民年金や厚生年金などの公的年金に上乗せされる老後資金づくりを目的とする年金制度のひとつです。加入者が掛金を出して、自ら金融商品を選んで運用を行い、積み立てた資産は60歳以降に一括または分割で受け取ります。また、自らが行う運用の成績によって、将来受け取る金額が変わってきます。ただし、65歳以上の人、国民年金保険料を払っていない人、国民年金保険料の免除・納付の猶予を受けている人などはiDeCoを利用できません。
 このiDeCo、最大の特徴は資金の拠出から運用、払い戻しに至る作業のすべてが拠出者自身の手により行われることです。この制度に誘導するべく、様々な税務上の特典が設けられており、そのうちの一つが運用の際に生じた運用益や配当金などがすべて非課税とされていることです。さらに、拠出した際には拠出額全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)として課税所得の圧縮にもなりますし、実際に払い戻しを受ける際には一時に受ける場合には退職所得扱いとなり所得税が大きく軽減されますし、年金と同じように受ける場合でも公的年金と同等の扱いを受けることになります。

両社の共通点・相違点

  1. 運用の際に生じる運用益等が非課税になるのはNISAもiDeCoも共通です。
  2. ただ、iDeCoは上記に加え、拠出時に所得控除、払い戻し時に退職金または公的年金と同等の扱いを受けるなど、さらなる優遇措置があります。 
  3. 一方でNISAは18歳以上の成人の方ならほぼ制限なく始められるのに対し、iDeCoは使える方に若干の制限があります。
  4. さらにNISAは口座内の商品を自由に売却することができるのに対し、iDeCoは始めてから最低10年間(また、60歳に達するまでは)払い戻しが受けられません。

主に以上のような違いがあり、NISAは主に余剰資金の活用に効果があると思われるのに対し、iDeCoはどちらかというと老後の資金を捻出するための制度といえるのではないでしょうか。
 
いかがでしょうか? 紙面の都合で十分な制度説明はできていないかもしれません。疑問点がありましたらご遠慮なくご相談ください。

Ⅱ マイホームを売却した時の税金

ー 特例の適用条件に注意してください。- 
 中古住宅の売買取引に関し、国土交通省の「令和5年版土地白書」によると、令和4年における中古マンションの成約平均価格と成約件数は、首都圏で4,276万円(前年比10.5%増)・35,429件(前年比11.0%減)、近畿圏で2,669万円(前年比で6.4%増)・16,814件(前年比1.6%減)と価格上昇と成約件数の減少といった結果となっています。住宅の売却価格の上昇に伴い、売却に係る税金負担も大きくなりますが、ここでは、マイホームを売却した際に、条件に応じて税率が変わる点や、税金がゼロになったり少なくなったりする特例についてご説明させていただきます。

税率について

 不動産を売却した場合、売却した翌年の3月15日までに譲渡所得として確定申告書を提出して所得税を納めます。この譲渡所得は不動産の売却価格からその不動産を買った時の価格(建物は償却費相当分を減額します)と取得にかかった費用、売却に要した費用を控除して算出します。そして、税率を掛けて税額が決まります。この税率について、売却した不動産の所有期間が、5年以下の場合は短期譲渡所得として39.63%の税率(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%)となります。5年超の場合は長期譲渡所得として20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)となります。また、この不動産の所有期間が10年超のマイホームであれば軽減税率の特例が適用され次の通りの税率となります。
 譲渡所得が6,000万円以下の部分の税率は14.21%(所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%)で、譲渡所得6,000万円超の部分は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)となります。
 所有期間が5年以下であっても、国等に対する譲渡、収用交換等による譲渡、独立行政法人都市再生機構等の行う住宅建設の用に供するための譲渡であれば税率は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)となります。
 ここで注意したいのは、所有期間の計算日です。所有期間は売却した時点で計算するのではなく、売却のあった年の1月1日時点で所有期間を計算します。従って、不動産を平成30年12月1日に購入して、令和5年12月2日に売却して5年と1日所有していても、譲渡所得での所有期間は4年になり、短期譲渡所得となります。計算違いで税金が大きく変わるので注意してください。
 又、配偶者や直系尊属等の特別関係者にマイホームを売却した場合、所有期間が10年超のマイホームであっても、上記の軽減税率の特例を適用できませんのでご注意ください。

居住用財産の譲渡所得の課税の特例

以下の要件のもと、譲渡所得を算出する上で3,000万円を控除することがきます。
  1. 自己の居住の用に供している家屋の譲渡であること。
  2. 自己の居住の用に供さなくなった家屋でも、自己の居住の用に供されなくなった日から3年を経過する日の12月31日までに譲渡したもの。
  3. 1又は2の家屋及びその家屋の敷地の用に供されている土地等。
  4. 1の家屋が災害で滅失した場合、災害のあった日から3年後の12月31日までに譲渡したもの。
  5. 売った年の前年および前々年に、他の特例を利用していない。
  6. 特別関係者への譲渡ではないこと。

空き家特例

相続した不動産で以下の要件のもと、譲渡所得を算出する上で3,000万円を控除することができます
  1. 建物だけでなく土地も相続していること
  2. 被相続人が亡くなられた日から3年後の12月31日までに売却したもの。
  3. 区分所有建物(マンション)でないこと。
  4. 1981年5月31日以前に建築された建物であること。
  5. 被相続人が亡くなる直前まで居住していた家屋であること。
  6. 同じ被相続人の相続ですでに空き家特例を利用していないこと。
  7. 特別関係者への売却ではないこと。
  8. 売却金額が1億円以下であること。
  9. 売却するとき建物がある場合は一定の耐震性が認められること、もしくは建物を解体して土地だけを売却していること。

※令和5年の税制改正で、令和6年1月1日以後の売却については、この家屋及び敷地等を相続又は遺贈により取得した相続人の数が3人以上の場合は、特別控除が2,000万円になります。

特定の居住用財産の買換えの特例

 令和5年12月31日までにマイホームを売却して、新たにマイホームを買い換えたときは、以下の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来にまたマイホームを売却する時まで繰り延べることができます。
  1. 譲渡資産は、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超え、譲渡者の居住期間が10年以上。
  2. 譲渡資産の売却価格が1億円以下で、買換資産のうち建物の床面積が50㎡以上(既存住宅である耐火建築分の場合は、一定の耐震基準を満たす耐火建築物を除き建築後の経過年数が25年以下)かつ、土地の面積が500㎡以下のもの(令和6年1月1日以後に建築確認を受ける住宅は、一定の省エネ基準を満たすこと)
  3. 売却した年の前年1月1日から売却した年の12月31日迄の間に、買換資産を取得し、かつ、売却した年の翌年12月31日迄にその取得した買換資産で自己の居住の用に供する見込みがあるとき。
  4. 特別関係者への売却ではないこと。

その他

 そのほか、居住用財産を売却して買換資産を購入するに際し、居住用財産に売却損がでた場合の「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」や、ローンを組んで購入した居住用財産をローン残債以下で売却した場合の「特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除」等がありマイホームを売却した際は、税制の特典とその適用要件に注意してください。実際には、細かい適用要件がありますので、ご注意ください。

Ⅲ 新興ECサイトが与える影響

― Temuの快進撃 ―
 中国発の格安ECサイトが快進撃を続けている。2022年9月にアメリカでローンチされて1年。はっきりした情報ではないが、7月-9月期の売上高は50億ドル(7500億円)を突破したようです。今まさにブラックフライデー・クリスマスに突入してこの調子はどうなるのだろう。

アメリカの成長を足掛かりに世界へ

 今や日本を含む47か国でサービスを開始している。アメリカ最大級のスポーツイベントであるアメリカンフットボールの「スーパーボウル」のテレビ中継にコマーシャルを大量投入して知名度を一気に向上させえたのは、良く知られるところです。その成功を世界への足掛かりとし現在は、最もダウンロードされているショッピングアプリの地位をアメリカ、フランス、イタリア、スペイン、ドイツ、英国で獲得しています。

価格破壊のわけ

SNSや口コミを見ている方はご存じだと思いますが、かなり安い。従って粗悪品などが届くのではないかとの不安の声もよく聞かれます。ではなぜこの価格を実現できるのでしょうか。
  1. 中間業者を省く
    生産者と直接取引することで徹底的にコストを削減しています。よく使われる手法ではありますが、生産者には余分なコストがかからないようにマーケティング・顧客獲得・商品の発送・アフターサービスECにかかわるすべてのことは「Temu」自らが実施することによってコストを下げています。
  2. 加盟店へのサービス
    手数料・保証金無料。一般的にはECサイトでは加盟店が商品を販売する際に手数料や保証金を払う必要があります。
    また、加盟店が商品を倉庫に送る送料も半分負担しています。
    つまり加盟店は、商品を倉庫に準備するだけで販売ができます。
  3. 赤字覚悟の運営
    新しいマーケットを開拓するための投資をして運営を続けています。
    投資額は1件の注文につき30ドルともいわれています。
  4. Temu内での価格競争
    加盟店同士の価格競争をさせることによって安さを実現しています。
    販売価格が同じような商品の価格より高い場合には、加盟店に再度見積もりさせる独自の価格チェックシステムがあります。
    さらに、毎週、加盟店同士で商品ごとに入札が行われています。加盟店は商品を一番安くできなければ、販売ができません。

ECサイトへの影響

  1. 日本での影響
    日本では2023年7月から開始しました。「SHEIN」や「Amazon」に近い激安通販として日本でも浸透してきています。すでに、Amazonの約半分の7500万人が使用と言われています。日本のショッピングサイトは戦々恐々としています。
  2. 海外での影響
    これからも海外には進出予定のようです。今は自動販売機の設置のように地図を塗りつぶしていっている段階ですが、瞬く間にショッピングECサイトの雄に躍り出ることでしょう。

 先ほども述べましたが、ショッピングサイトのダウンロード数1位を数か国出してきておりまだまだ伸びしろがあるように感じます。Amazonなどの先行のECサイトで通信販売は抵抗のないものになってきました。特に海外では、都会の生活者はともかく地方の生活者にとっては、都会と同じものが手に入るサイトとして重宝がられています。

今月のブックマーク

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便利なコピペツール「Clibor」
クリップボードの履歴ソフトです。よく使う定型文を登録したり、分野ごとにカテゴライズしてスピーディーにメールなどを作成できます。             https://chigusa-web.com/clibor/

ものづくり・商業・サービス補助金のご案内

雇用の多くを占める中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて、新製品・サービスの開発や生産プロセス等に省力化に必要な設備投資等を支援する制度です。

支援枠・類型の概要

 

省 力 化

(オーダーメイド)枠

製品・サービス

高付加価値化枠

グローバル枠

通常類型

成長分野

進出類型

(DX・GX)

要 件

省力化への投資

製品・サービスの高付加価値化

DXやGXに資するもの

海外事業の拡大・強化に資するもの

補助上限

750万~8000万

750万円~1,250万円

1,000万円~2,500万円

3,000万円

補助率

1/2

※小規模・再生事業者2/3

※1,500万円までは1/2、

 1,500万円を超える部分は1/3

1/2

※小規模・再生事業者2/3

※新型コロナ加速化特例2/3

2/3

 

1/2

※小規模2/3

対象経費

<全枠・類型共通>機械装置・システム構築費(必須)、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用料、原材料費

<グローバル枠のみ>海外旅費、通訳、翻訳費、広告宣伝、販売促進費も利用可能


大幅な賃上げに取り組む事業者への支援
補助事業終了後、3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者に対し、100万円~2,000万円を 上記各枠の補助上限に上乗せ(申請枠・類型、従業員規模によって異なる、新型コロナ加速化特例適用事業者を除く)
年末・年始 休業のお知らせ:令和5年12月29日~令和6年1月4日(5日より通常通り)
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