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TFGニュース 2023年11月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2023年11月号 No.387

Ⅰ 企業が成長するための税制

― 令和5年度税制改正からの考察 ―
 
 令和5年度の税制改正における基本的考え方には、個人や企業、そして地域に眠るポテンシャルを最大限に引き出すとのメッセージを税制において具現化することを念頭にしています。
バブル経済崩壊後から今日に至る長い期間の経済低迷は、我が国の経済構造を四半世紀に及ぶデフレ構造にしてしまいました。このことにより、我が国には閉塞感が蔓延し、平均賃金は上がらず、GDPは伸びない状況が続いています。OECDによる2022年の平均年収(名目ベース)の調査対象主要国1位から30位で日本は21位であり、IMFの経済見通しでは、日本のGDPは2023年にドイツに抜かれて4位になるそうです。
 政府は約10年間、成長戦略を一体的に進めてきましたが、新型コロナウィルス感染症を発端に世界情勢の不安定は原材料価格の上昇を招き、円安による影響は物価高を起こし、国民生活は苦しい状況です。これを打破するためには様々な方策があると思われますが、現状最も声高に叫ばれているのは私たちの賃金上昇ではないでしょうか。
 しかし、「賃金上昇」は企業が賃金の源泉となる利益、つまり儲けを増やし、キャッシュも増やすことが必要です。企業が儲けやキャッシュを増やすためには企業が成長することが当然必要であります。企業の成長は営業力を強化して取引先を増やして売上高を伸ばすことでありますが、これ以外に企業は成長に資する事業投資をすることも必要です。事業投資には人材に対するものと、設備に対するものが考えられます。
 当欄では、令和5年度の税制改正における中小企業者等の設備投資に関する改正内容の一部を記載します。

中小企業経営強化税制

 中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、対象設備の取得や製作等をした場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用できる制度です。なお、償却限度額まで償却費を計上しなかった場合の償却不足額、税額控除限度額を超える金額は、翌事業年度に繰越できます。
 ▪適用対象者
青色申告書を提出する「中小企業者等」で、中小企業等経営強化法第17条第1項の認定を受けた同法の「特定事業者等」に該当するものです。中小企業者等とは、次の通りです。①資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人 ②資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人 ③常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主 ④協同組合等 また、特定事業者等とは、次の通りです。①常時使用する従業員数が2,000人以下の法人又は個人 ②企業組合、協同組合、事業協同組合、事業協同小組合、商工組合、協同組合連合会その他特別の法律により設立された組合及びその連合会
 ▪適用期間
令和7年3月31日までに、対象設備の取得等をして指定事業の用に供することです。
 ▪対象設備

類型

要件

確認書

対象設備

その他要件

生産性向上設備

(A類型)

生産性が旧モデル化平均

1%以上向上する設備

工業会等

 

機械装置(160万円以上)

 

工具(30万円以上)

 

建物附属設備(60万円以上)

 

ソフトウェア(70万円以上)

(A類型の場合、設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限る)

・生産設備を構成するもの

※事務用器具備品・本店・寄宿舎等に係る建物附属設備、福利厚生施設に係るものは該当しない

 

・国内への投資であること

 

・中古資産・貸付資産でないこと等

収益力強化設備

(B類型)

投資収益率が年平均5%以上

の投資計画に係る設備

 

経済

産業局

デジタル化設備

(C類型)

可視化、遠隔操作、自動制御

化のいずれかに該当する設備

経営資源集約化設備

(D類型)

修正ROA又は有形固定資産

回転率が一定割合以上の投資

計画に係る設備



固定資産税の特例

 中小企業等経営強化法で規定される認定先端設備等導入計画に基づく設備投資について、市町村の判断により、新規取得される償却資産に係る固定資産税が新たに課税される年から3年に限り1/2、さらに雇用者全体の給与が1.5%以上増加することを従業員に表明した場合は新たに課税される年から最長5年間(令和6年度中に資産を取得した場合は、最初の4年度分)に限り1/3に軽減されます。
 なお、この特例は計画期間内に労働生産性を一定期間向上させるため、先端技術等を導入する計画を策定し、新たに導入する設備が所在する市区町村における「導入促進基本計画」等に合致する場合に認定を受けることで、特例の適用を受けることができます。
したがって、まず、新たに導入する設備が所在する市区町村が「導入促進基本計画」を策定しているかを確認することが必要です。
 ▪適用期間
  令和7年3月31日までに対象設備等の取得が必要です。
 ▪認定対象者
  中小企業者等(中小企業等経営強化法第2条第1項)に該当しなければなりません。
 ▪適用要件
1.労働生産性は、基準年度比で年平均3%以上(営業利益+人件費+減価償却費÷労働投入量[労働者数又は労働者数×1人当たり年間就業時間])向上することです。
2.対象設備等は年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる次の減価償却資産です。①機械装置(160万円以上) ②測定工具及び検査工具(30万円以上) ③器具備品(30万円以上) ④建物附属設備(60万円以上) これらは生産、販売活動等の用に直接供され、中古資産でないことが必要です。
  
 以上、設備投資に係る税制改正の一部を記載しましたが、これら以外にも、地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除制度(地域未来投資促進税制)、情報技術事業適応設備を取得した場合等の特別償却又は特別税額控除制度(デジタルトランスフォーメーション投資促進税制)、特定事業継続力強化設備等の特別償却制度(中小企業防災・減殺投資促進税制)なども整備されています。また加えて、企業の試験研究費に係る税制改正もあり、企業が成長するための税制改正が令和5年度の税制改正には盛り込まれています。適用条件を満たし、ご活用できるものがあれば、是非、ご活用頂きたいと存じます。

経済産業省情報コーナー

10月25日に「グッドデザイン賞」の発表がありました。時代を反映してか今回の大賞は、老人デイサービスの「52間の縁側」となりました。今回からコロナ禍で縮小もしくはバーチャル化してきた「デザインに触れる機会」「デザインを学ぶ機会」を東京ミッドタウンで復活しました。開催期間は残念ながら終わってしまいましたが、この取り組みは今後、日本では必要な分野だと思います。

Ⅱ 医療費控除を受けるために

― 準備が重要 ―
 病気などで病院にかかって、医療費が予想以上に嵩んでしまったという方もおられるのではないでしょうか。医療費の負担を減らす方法の一つとして皆様ご存じの「医療費控除」という制度があります。年末に向けて準備していきましょう。

医療費控除とは?

 医療費控除とは1年間で支払った医療費の合計が一定の金額を超えたとき、その医療費額に基づいて算定した「所得控除」を受けることができる制度です。
 所得控除とは税金を計算するときの「課税所得」に含めないようにすることができるということです。つまり確定申告時に医療費控除を申告すると支払った医療費に応じて課税所得が少なくなり、結果税金が減額されるということです。

医療費控除の対象となる医療費の要件

医療費の要件は下記のとおりです。
  1. 納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること
  2. その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること、つまり、12月31日で未払の場合、現実に支払った年の医療費控除の対象となることに注意が必要となります。

医療費控除対象となる金額

対象となる金額は下記の式で計算された金額で最高200万円となります。
 
【実際に支払った医療費の合計額-※保険金などで補填される金額】-10万円
 
※保険金などで補てんされる金額
例として挙げられているものとしては、生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金。
なお、上記算式で控除されている10万円については、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額の5%の金額となりますので、10万円未満となることもありますのでご注意ください。

医療費控除の特例

 医療費控除の特例としてセルフメディケーション税制があります。
平成29年1月1日から令和8年12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の特定一般用医療品等購入費を支払った場合において、自己がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取り組みとして一定の健康診査や予防接種などを行っているときは通常の医療費控除との選択により、その年中の特定一般用医療品等購入費の合計額の内、12,000円を超える部分の金額を控除額とするセルフメディケーション税制の適用を受けることができます。
セルフメディケーション税制を適用する場合、医薬品を購入した際の領収書が必要となります。領収書の保管を忘れないようにしましょう。

確定申告に関して

 確定申告書で医療費控除の明細書を提出する必要があります。なお医療費控除の明細書の記載内容を確認するため、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、医療費の領収書(医療費通知を添付したものを除く)の提示又は提出を求められる場合があります。最低5年間は領収書等の保存をお願いします。
 また当たり前のことですが、確定申告は期限までに申告書を作成し申告する必要がありますので期限までに申告をするようにしましょう。

Ⅲ ChatGPTの進化

― 目と耳の実装 ―
 R5年3月号の紙面の「今月のブックマーク」でご紹介させていただいた「ChatGPT」が進化を遂げてきています。日本語での生成AIの蓄積がなされ、より優れた内容のものが作られるようになっています。その上、目(画像)耳(音声)が加わってきました。これで、アップルの「Siri」やAmazonの「Alexa」と競合する一般ユーザー向けのアプリへとグレードアップしつつあります。
 長期ビジョンで「より人間に近い知能をつくる」というOpenAIの長期ビジョンの実現を後押ししそうです。

音声や資格情報を蓄積することによってより進化が加速

 人間はテキストだけでなく聴覚・視覚で情報を蓄積しています。従って今までテキストだけでしか蓄積できていなかった情報がより多方面から得られることにより、より高度なAIを作れることにつながることは容易に想像できます。次世代の主要なAIモデルはどの企業もマルチモーダルAIになると言われています。言語だけを使ってモデルを構築すれば、どれだけ優秀なモデルを構築しても所詮それは言語だけになります。
 
 OpenAIが独自開発したというChatGPTの新しい音声技術は、他社へのライセンス供与という新しいビジネスの展開を狙ったものです。例えばラジオ制作会社が作った音声をOpenAIの音声合成アルゴリズムを利用することでラジオの音声を他の言語に翻訳する機能を試験運用する予定のようです。元の配信者をAIが模倣して生成した音声が流れる仕組みです。

音声かテキストのいずれかで応答

 新しいバージョンのChatGPTアプリには、ヘッドフォンのアイコンと写真とカメラのアイコンが付きました。これらの音声と視覚データの入力機能が情報をテキストに変換して、画像認識や音声認識の技術に基づいてチャットポットが回答を生成する仕組みになっています。回答はユーザーが選択したモードに基づいて、音声かテキストのいずれかで応答するようになっています。

目(画像)、視覚的認知能力の追加

 ChatGPTアプリで写真や画像をアップロードしたり撮影したりすると、その画像についての説明や関連情報を提供してくれます。ちょうど「Googleレンズ」のような仕様です。この機能についてはかなり制限が設けられているようです。例えば、個人情報が特定されそうな画像については回答はされず、その部分には触れずに回答してくるという具合です。またアルゴリズム訓練用に使われないようにすることができます。それならアルゴリズムに偏りが出るのでは?との疑問も浮かびますが、OpenAIサイドでも決めかねていて、ユーザーに任せる形を今は取っていると考えられます。

耳(音声)

 音声データをテキストに変換して対応しているようです。アプリには5種類の声が用意されていて選択できます。ただし、ChatGPTの音声認識は反応が鈍いとの報告もあります。OpenAIはMidjourneyの次世代のアシスタントやAmazon「ALEXA」と同じような会話型であると説明しているが、まだまだ改良の余地がありそうです。
 一方では、テキスト版のChatGPTに存在している制限の多くは、新しいバージョンにも反映されています。例えば爆弾の製造方法を声で質問するとChatGPTは拒否してきます。

多様化するデータの扱い

 生成AIの世界はこのChatGPTの進歩についてさらに盛り上がってきます。しかし、懸念材料も増えてくることも確かです。例えば、今まではテキストデータのみの訓練用のデータであったものが画像や音声のデータも訓練用のデータとしてユーザーから収集することになります。つまりユーザーが共有する大量の音声クエリや画像データには、人々の顔や身体の特定部位の写真も含まれている可能性が高く、これまで以上にデータの取り扱いは慎重に扱う必要があります。これらのデータを利用してアルゴリズムの訓練用データを拡充していく方針ならさらに慎重になる必要が出てきます。
 これに対して、OpenAIは、ユーザーの音声クエリを使ったモデルの訓練に関する方針は、まだ決められていないようです。従って現在は、訓練の為に音声データを収集することはありません。データの共有を望むユーザーのために何を可能にすべきか検討中です。とコメントがあります。
 今後は「不気味の谷」を超えられるかが焦点となってきます。



 今月のブックマーク
ferret
 有名なWebメディアです。Webマーケティングに役立つ情報を入手するサイトとなります。

小規模事業者持続化補助金のご案内

小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成したうえで行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
    
補助率・補助上限額

類型

通常枠

賃金

引上げ枠

卒業枠

後継者

支援枠

創業枠

補助率

2/3

2/3(赤字事業者については3/4)

2/3

補助上限

50万

200万

インボイス特例

 

※50万

 

※インボイス特例の要件を満たす場合は上記補助上限額に50万円上乗せ
 
類型とは 

類 型

概  要

通常枠

小規模事業者自らが作成した経営計画に基づき、商工会議所の支援を受けながら行う販路開拓等の取組を支援。

賃金引上げ枠

販路開拓に取り組みに加え、事業所内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上である小規模事業者。

卒業枠

販路開拓の取組に加え、雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者

後継者支援枠

販路開拓の取組に加え、アトツギ甲子園においてファイナリスト又は準ファイナリストに選ばれた小規模事業者

創業枠

産業競争力強化法に基づく「特定創業支援事業の支援」を受け販路開拓に取り組む、過去3か年の間に開業した小規模事業者


「インボイス制度シリーズ ウェビナー」全3部を再配信

●配信期間
令和5年11月10日(金 )~12月20日(水)
●費  用
無 料
株式会社 東亜経営総研 藤本までメールまたはFAXでお申し込みください
FAX:(06)6538-0896 メール: info@tfg.gr.jp
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編集委員長 藤本 清
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